[PR]

 六章から九章までを収録した『吾輩ハ猫デアル』中編(明治39年11月刊)を手にし、私は、「あなたはどこにおいでなのでしょうか」という、霊のモチーフがうかがわれる川端康成の戦後の連作「反橋」「しぐれ」「住吉」の書き出しの一節を思い出した。漱石が中編刊行の4年ほど前に亡くなった子規について、悲壮なまでに深く回想している「序」を読んだからである。「序をかくときに不図(ふと)思い出した」とあるが、「十月」付のこの文章は、「二百十日」を書き上げ、門下生らとの面会日を木曜に定めた頃のもので、「筐底(きょうてい)から出して」子規からの「僕ハモーダメニナッテシマッタ」で始まる最後の手紙を見つめる漱石の表情が思い浮かぶ。

 「猫」の中で子規の名前が出て来るのは、「ホトトギス」連載最終回の十一章(8月号)に1カ所だけだが、「猫」連載第1回と同じ38年1月号に、子規の晩年の病床の手記「仰臥(ぎょうが)漫録」が初めて活字で紹介されていた。猫の快気焰(かいきえん)と、痛みゆえの自殺衝動を生々しく描いた子規の文章が、背中合わせになっているわけだ。漱石も感慨を持って読んだに違いない。が、「猫」はすでに動き出して成長していく。有名になったものの、「子規がいきて居たら『猫』を読んで何と云(い)うか知らぬ」とこの「序」にあるように、漱石の思いは複雑だ。

 子規の「書キタイコトハ多イガ…

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

980円で月300本まで有料記事を読めるお得なシンプルコースのお申し込みはこちら

こんなニュースも