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 1年次から全員海外追放――。そんなキャッチフレーズで近畿大(大阪府東大阪市)が今春開設した国際学部。その第1期生となる1年生約540人全員が今秋、海外へ旅立った。企業が海外経験者を求める中、各地の大学で留学をカリキュラムに盛り込む動きが広がる。

1年次540人が今秋出発

 9月中旬、関西空港のロビーで、米国に留学する近大国際学部の1年生約100人が家族に見送られていた。航空会社への就職を希望する樋川紗也子さん(19)は、必ず留学できる点に魅力を感じて入学。初の海外生活を前に「異文化を学びたい」と意気込んだ。

 定員は1学年500人。1年間の留学が必修で、今年はグローバル専攻約480人が米国へ、東アジア専攻約60人が台湾や韓国などへ秋から留学した。

 狙いは国際化に対応できる人材の育成だ。

 日本経済団体連合会が463社の回答を得て昨年まとめた調査によると、海外事業を展開する上で求める人材として「海外の文化や価値観の差に柔軟に対応する姿勢」を挙げた企業が最も多かった。300社以上が大学に期待する取り組みとして「留学の奨励」を挙げた。経団連の担当者は「前提として海外事業の展開に人材育成が追いついていない課題を企業は抱えている。語学力はもちろん異文化への理解力を備えた留学経験者を求めている」と話す。

 近大によると500人もの学生を一斉に海外に送り出すのは珍しいという。広報部の加藤公代課長は「これまで近大は国際化への対応が遅れていた。一度に500人を送り出す思い切った取り組みで、国際化を進めるとっかかりにしたいと考えた」と話す。ビザの申請や保険の加入といった煩雑な手続きを大学側がサポートする。

 苦労したのは、学生の受け入れ先の確保だ。語学学校を運営する「ベルリッツコーポレーション」(本社・米国)と提携し、米国の計27大学内に設置されているグループの語学学校「ELS」を留学先として確保した。ELSでは米国の大学に正規留学を目指す世界中の若者と少人数で英語を学ぶ。

 グローバル専攻の学生は1年の前期に週13時間半の英語の授業を受け留学に備えた。藤田直也・国際学部長代理は「1、2年時は語学の習得に重きが置かれ、専門科目を学ぶ時期が後ろ倒しになるのを危惧する声はあるが、語学の基礎があれば専門性も高めやすい」と話す。ただ、米国だと150万~220万円の留学先の授業料に加え、月10万~15万円の生活費が必要で、費用負担は小さくない。

 藤田学部長代理は「単に語学ができるだけでは世界で通用しない。発信力を高めることが重要だ」と話す。

早大や千葉大でも

 国際教養大(秋田市)や早稲田大国際教養学部(東京都新宿区)では、1年間の海外の大学への留学が必修化されている。今年開設の千葉大国際教養学部(千葉市)も、2週間程度の短期から1年間の長期も含めて留学を必修化した。

 2015年開設の山口大国際総合科学部(山口市)は、体調面や英語力不足で行けない学生が出ることも考慮して必修とはしていないが、原則として2年秋から1年間留学する。アジアで事業展開する日本企業が多いことを踏まえて、英語で授業をする中国やマレーシアなどアジア圏への留学に力を入れる。英語に加えて現地の語学も習得させるのが狙いだ。

 日本学生支援機構によると、14年度の大学生や専門学校生らの留学者は8万1千人で、09年度の2倍以上。文部科学省は産業界の要請も踏まえ、20年までに留学者をさらに倍増させる目標を掲げる。(沢木香織)