ティフアナ=田村剛
そびえる柵の高さは約5メートル。細かく張り巡らされた鉄格子には、指先がやっと入るほどの隙間しかない。
米国と国境を接するメキシコ北部の町ティフアナ。毎週末、1日4時間だけ柵越しの会話が認められる。米国に住む家族と会おうと、多くの人が集まる。
「目の前の娘を抱きしめることもできない」。11月初め、マリア・バルガスさん(46)は、ここで5年ぶりに娘のエイミーさん(24)と再会した。
マリアさんは2002年、娘を連れて米国に不法入国して働いていた。だが1人だけ強制送還された。顔を合わせた母子は泣き続け、鉄格子を挟んで互いの手のひらを重ね合わせた。
米国側から1歳の息子を連れて姉に会いに来たフリアン・コロネルさん(33)は「トランプは国籍や文化の違いで、分断と憎悪をあおっている。とても悲しいことだ」と嘆いた。
ティフアナ市内の別の場所では、二重、三重に柵や壁が国境沿いに張り巡らされていた。1980年代までは簡素な金網だったが、90年代から不法移民対策として米政府が建設を進め、2001年の米同時多発テロ以降にさらに強化された。今では両国の国境、約3200キロの3分の1ほどに金属製の柵や壁がある。
それでも、米国を目指す人の流れは止まらない。
海岸近くの国境の柵には、太い鉄格子の間に石がはめ込まれていた。
「米国に渡ろうとした人たちが足場にした」と、地元の男性が耳打ちしてくれた。霧が深い夜には、集団で柵を越えようとする人たちの姿があるという。
匿名を条件に取材に応じた密入国ブローカーの男(36)は、1人7千ドル(約75万円)で道案内をしていると説明した。柵を越えるほか、砂漠を横断したり車の荷台に入って越境したりする方法があるという。「トランプが壁をつくりたいなら、つくればいい。空まで届く壁をつくったとしても、乗り越えてやる」
■「かくも天国から遠く、かくも…
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朝日新聞国際報道部