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 「家族のために何とか病気を治したい」。そんな強い思いが伝わってきました。

 今週の連載「患者を生きる C型肝炎」で紹介した栃木県の農業、小野崎猛さん(63)は、1990年にC型肝炎とわかってから、20年以上にわたって薬の副作用などで苦しい思いをしながら治療を続けました。新しい抗ウイルス薬を飲む治療でやっとC型肝炎ウイルスを体から排除することに成功しました。

 私は90年に朝日新聞で医学担当の記者になってから20年以上、C型肝炎の取材をしてきました。小野崎さんはひとりの患者として、私はひとりの記者として、治療の歴史を見てきました。小野崎さんの話をうかがっていて、「ああ、そういう時代がありましたね」と思い返すこともしばしばでした。

 92年、抗ウイルス作用がある注射薬、インターフェロンを使った治療に公的医療保険が適用された時期、「これで治るかもしれない」と患者の期待は高まりました。小野崎さんは当時、大学病院でこの治療を受け、私は治療を紹介する記事を書いていました。

 しかし、インターフェロン治療で患者は発熱、吐き気、うつ症状などの副作用で苦しい思いをしました。ウイルスの量が多くて「難治型」の場合には、ウイルス排除に成功する割合が低いことも判明しました。

 インターフェロン単独の治療では、難治性のC型肝炎の場合、ウイルス排除の成功率は1割以下であることがわかってきました。

 05年ごろには、改良型のペグ・インターフェロンと、抗ウイルス薬リバビリンを併用する治療で成功率が5割程度まで伸びます。

 14年からは、インターフェロンを使わずに、抗ウイルス薬の飲み薬で治療するインターフェロンフリー治療が登場。成功率は90~100%に達してきました。

 この新しい飲み薬で治療に成功した体験を語っていただいたとき、小野崎さんは満面の笑みでした。

 私は08年に「あしたの医療 202X」という記事の中で、C型肝炎治療の未来を描きました。専門家の話として「2020年ごろには90%が完治するようになる」と予測しました。

 その予想よりかなり早く90%以上の成功率が実現しました。新薬の開発によって治療が急速に進歩することを実感しています。

 今の医療技術では治りにくい、治療の成功率が低い病気はたくさんあります。

 小野崎さんたちが歩んだC型肝炎治療の歴史には、治療の進歩を求める患者の願いが刻まれています。これからも、さまざまな病気で大きな進歩があることを願ってやみません。(浅井文和)