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 黒い手帳に、細かい文字がびっしりと書き込まれていた。

 「爆風ニテ重傷セル人、河に浸リテ死セル人、惨タル風景ナリ」

 被爆体験をもとにした小説「夏の花」で知られる原民喜(1905~51年)のものだ。手帳には、瓦解(がかい)した広島の町の様子や、死線をさまよう人々の姿が、生々しく、時に怖いほど克明に描写してある。

 民喜は1945年8月6日、広島市幟町の兄の家で原爆に遭い、幸い厠(かわや)にいたため無事だった。その後、避難するために市内をさまよった際、持っていた手帳に見たままを書きつづった。

 7日、広島駅北側の東照宮に野宿したころから記録は始まる。その後、八幡村(現・広島市佐伯区)に避難したあとも、書き留め続けた。

 この記録をもとに、民喜は「夏の花」をはじめ、「廃墟から」などの作品を執筆していく。手帳は原爆文学の原点ともいえる。

 51年3月、東京の中央線の線路に身を横たえて自殺した後、民喜の手帳は、遺書で「著作権の相続者」に指名されたおいの時彦さん(82)のもとで、大切に保管されてきた。

 昨年、時彦さんは貴重な記録を継承してもらいたいと、広島市の広島平和記念資料館(原爆資料館)に寄託した。

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