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 老いて認知症になった父、そして母。長崎県佐世保市の近藤福代さん(70)は、そんな両親のことを20年以上前から短歌に詠み、本紙の歌壇欄「朝日歌壇」に投稿してきた。思いを刻んだ数々の歌は、「認知症社会」を生きる私たちの胸に静かに響いてくる。

荒れた父、母への暴力に胸を痛めて

 呆けたる父に真向かい明日よりは施設に預けると告げし日は雨

 近藤さんの父・明さんは造船会社で働いていた。仕事一筋のまじめな職人で、70歳まで一線で働いた。1986年に脳卒中で倒れ、認知症の症状が出始めた。当時、兄夫婦が実家で父母と同居していた。将来の介護を考えて、近藤さんも夫と実家そばに引っ越した。

 父はできなくなることが増える自分にいらだち、荒れた。次第に酒が手放せなくなった。心配して注意する母・八重さん(104)に手をあげるようになった。深夜に起き出し、「働きに行くのに弁当もつくらんでっ」と母を怒った。家族が最も胸を痛めたのが、母への暴力だった。

 兄夫婦と相談し、父に施設に入居してもらおうと決心をした。93年のことだ。

 近藤さんは父と一緒に施設に行き、「これからここに住んでもらいます」と告げた。「なぜ? うそやろ」と問う父。父の暴力で母の肋骨(ろっこつ)にひびが入ったことを伝えると、「僕が母さんば、たたくわけなかやろ」「たたいたと言うなら、土下座して謝る」と訴えた。母への暴力の記憶は消えていた。

 冒頭の歌はこのときの情景を詠み、97年3月に載った。

 一向に自宅に戻れない父は、「…

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