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 巨大ターミナル、JR大宮駅(埼玉県)東口の南銀座通り。通称「ナンギン」と呼ばれ、飲食店や風俗店がひしめき合う県内屈指の歓楽街だ。約400店が密集する路地では、通行人に声をかけて店に誘う「客引き」行為が急増中という。忘年会シーズンを迎え、にぎわう街中を歩いてみた。

 記者が歩いたのは今年11月の週末の夜。「ダメ!客引き行為」と書かれた旗のかかる南銀座の商店街入り口に足を踏み入れるやいなや、客引きの男女から次々と声がかかった。

 「2時間飲み放題、1千円です。どうですか」。大学4年のアルバイトと称する男性が、メニュー表を見せてきた。「客引きの店って高いんでしょ」。そう聞くと、「そんなことないです。1千円と、お通し1品頼んでくれるだけでいいんです」と熱弁を続けた。「最近できた店なので、客引きしないと人が入らなくて」という。

 男性を振り切り、小さい路地に入ると、今度は中国出身という女性が「安く飲めるよ。4千円だけでいいよ」と笑顔で誘ってきた。断るも、「飲もうよ、お兄さん」などと勧誘はしつこく続いた。

 この日は20分ほど歩いたが、15人以上から客引きを受けた。記者の腕をつかみ、誘う客引きもいた。

 「昨年の10月ごろから、客引きが多くて迷惑だとの通報が、南銀座で急増している」と言うのは県警保安課の逆井剛人次席。所轄の大宮署管内では今年に入り、風営法または県迷惑行為防止条例違反の疑いで逮捕などした件数が9月末で45件。昨年1年間の17件を大きく上回っている。摘発の半数以上を飲食店の客引きが占める。

 10月には、報酬を約束して3人の男女に手を引っ張るなど執拗(しつよう)な客引きをさせたとして、客引き集団のリーダー格の20代男を県迷惑行為防止条例違反の容疑で逮捕した。県警は、違法な客引きを行う集団が、県内外から南銀座に流入しつつあるとみて取り締まりを強化している。

「雰囲気怖い」避ける客も 商店街、条例強化求める声も

 なぜ客引きが増えたのか。「都内の池袋などで客引きの条例が厳しくなり、それよりも緩やかそうに見えるナンギンが目を付けられたのでは」とみるのは、大宮南銀座親正会の山崎泰生副会長(60)だ。「お客さんはもちろんだが、まじめにやっている店も被害を受けている」と訴える。悪質な客引きのため、普段は客引きをしないような店も従業員を店前に立たせ、横取りを阻止しているのだという。

 大手飲食店名が書かれたプラカードを手にしながら「大手は予約でいっぱい」と別の店に連れて行く悪質な手口もある。居酒屋チェーンなどが入るビルを管理する男性(46)は数カ月前からビル前に警備員を配置した。「ビルの前で客引きを行わせないためです」。

 ともるネオンや赤ちょうちんで、仕事に疲れたサラリーマンらをいやしてきたナンギン。だが、「このごろは『雰囲気が怖い』と通りを避ける地元の人もいる」と山崎さんら商店主の悩みは深い。

 悪質、巧妙化する客引きに、自治体も対策に乗り出した。さいたま市は今月1日、客引きへの注意を支援する「市繁華街商業環境整備推進員」を設置。市で開く講習を受けた地元の人を中心に、自主的なパトロールを行っている。

 一方で、条例の不備を指摘する声もある。現行の県迷惑行為防止条例では、長い距離をつきまとうなど「執拗(しつよう)な客引き」ではないと、摘発の対象とならない。

 東京都豊島区や京都市などでは昨年、客引きそのものを禁止する条例が施行された。大宮東口商店街連絡協議会長の新井正男さん(71)は「客引きそのものを取り締まる条例が、さいたまでも必要だ」と力説。市に新たな条例制定を求めていくという。(小笠原一樹)