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 がんの骨転移と向きあう人たちは、普段どんなことに気をつけ、どんなことを考えているのか。

 神奈川県の女性(62)は、48歳のときに初期の乳がんと診断された。右の乳房を全摘し、ホルモン治療などをしてきた。59歳のとき、定期検査で肋骨(ろっこつ)と鎖骨に転移していることがわかった。いまはホルモン治療を続けながら、骨転移の治療で注射薬のランマークを使う。

 趣味でテニスを続けてきたが、骨に負担がかかる恐れもあり、休止しているという。重いものは無理して持たないことなども心がけている。「いつどうなるのかと、不安になることもある」という。

 ただ、いまのところ日常生活に支障はない。旅行も楽しみたいという。「完治はないのかもしれないが、モグラたたきのように治療を続けていれば、もっといい治療法が出てくるかもしれない」と話す。

 記事で紹介した東京都の女性(38)は、骨がもろくなるのを抑える点滴薬のゾメタを使いながら仕事を続けられている。心配のひとつは、痛みを敏感に察知できるかだ。早く気付き、医師に伝えて対応をとることが重要だが、例えば普通の腰痛などの痛みと、骨転移による痛みはどう違うのか。医師には「一過性ではなく、持続する痛み」と言われている。わずかなことでも違和感があれば伝えるようにしたいという。

 2014年に膵臓(すいぞう)がんと診断された女性(54)は今年2月、骨盤の一部にある仙骨への転移がわかった。最近、鈍痛を感じる時間が長くなってきた。ランマークを使いつつ、鎮痛薬を服用して痛みを和らげている。20年近く通っていたテニススクールは休んでいるが、週2回のパートの仕事は続けている。

 女性は「痛みがコントロールされていれば、私なりに快適に過ごせる」と話す。がんと闘うのではなく共存していきたい、という。2人に1人が、がんになる時代。骨転移は誰にとっても無縁の話ではない、と感じる。骨転移があると、何もできなくなると誤解されることもある。

 女性は「私にとっては生活の質(QOL)が最も重要。QOLが満たされていれば、骨転移があっても、健康な人と同じように旅行や家事などもできるし、生活を楽しめることを知ってほしい」と話す。

■■取材記者からのメッセージ■■■

 がんの骨転移は、がんが進行したことを意味します。その現実は重く、取材前は、正直に言えば、どこか身構えているところがありました。しかし、当事者の方々の取材を通して浮かび上がってきたのは、不安を抱えつつも生活を楽しみ、前向きに生きる姿でした。もちろん、そんな方たちばかりではなく、現実を受け止めることが難しい方も多いと思います。

 「伝えたいことって、いっぱいあるんですよね」「自分自身、頭のなかで整理できない考えを、見直すきっかけになるかなと思ったんです」。なぜ、取材を受けようと思ったのか尋ねたとき、ある患者さんはそう答えてくれました。

 がんは誰もがなりうる病気です。当然、その延長線上にある骨転移も他人事ではありません。少しずつではありますが、医療現場でがんの骨転移の重要性を見直す動きが始まっており、薬を中心とした治療の選択肢も増えています。今後も関心を持って、取材を続けたいと思います。

<アピタル:もっと医療面・がん>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/iryou/(武田耕太)