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 「除夜の鐘」を大みそかの昼につく寺が、静岡県牧之原市にある。「うるさい」という苦情に配慮してやめた鐘を、再開するにあたってたどり着いたアイデア。明るい時間の鐘には思わぬ御利益もあった。

 約450年の歴史を持つ大澤寺(だいたくじ)。十数年前、現住職の今井一光(いっこう)さん(58)の父である14代目住職が、除夜の鐘を中止した。夜中から未明にかけて鳴り響く梵鐘(ぼんしょう)の音や、除夜の鐘が終わっても訪れた人らが鐘をつく行為に、地域の人から「うるさい」という匿名の電話が相次いだためだ。

 2006年に住職を引き継いだ今井さんの大みそかの仕事は、「除夜の鐘はやっておりません」と書いた掲示板を出し、鐘をつく撞木(しゅもく)をロープで固定することだった。だが、鳴らない鐘は「死んだ鐘」。ただぶら下がる鐘の存在意義は一体何なのか――。そんな思いを抱くようになった。

 鐘には今井さんの祖父の13代目の思いも込められている。戦中の金属類回収令で鐘を供出。戦後、探し出そうと訪ねた工場で、鐘が溶かされてしまったことを知った。悔し涙を流した祖父は、檀家(だんか)の支援で、1955年に鐘を復活させた。

 「祖父や寄進してくれた人の思いを無駄にしたくない。でも、うるさいという声にも配慮しないと」。そう考えた今井さんは地域を巻き込み、2014年に午後2時から始まる「除夕(じょせき)の鐘」として復活させた。昨年には大みそかの夕飯の支度がしやすいよう、正午に時間を変更。当日は多くの人が参加した。

 全日本仏教会によると、除夜の鐘には、梵鐘をつくことで煩悩をなくし、新年を迎えるという意味があると伝えられている。つく時間は大みそかの午後11時過ぎからが多いが、寺によって異なるという。

 大澤寺では時間の前倒しによる利点もあった。昼間は足元もよく見え、つまずきにくい。子どもからお年寄りまで幅広い世代が参加しやすく、地域住民同士の交流につながる。今井さんは「伝統も文化も大切だけど、みんなが楽しければ、それでいいんじゃないかな」。

 今年も、31日の正午から鐘をつく。(北川サイラ)

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