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第2章「子どもたち」(7)

 一時保護中の姉妹を児童養護施設に入所させることに、母親が同意した。本来ならほっとしていいところだが、虐待対応ワーカー(児童福祉司)のケイコ(仮名)の心はどこかすっきりしなかった。これからのことを考えると悩ましいのだ。

 母子は生活保護世帯。母親は酒を飲み、大量服薬したり、リストカットしたり。包丁を娘2人にも向けたため、児童相談所(児相)が一時保護した。そのとき2人は「家には帰りたくない」と言った。

 当初、母親は反発した。ふてくされ、怒り、施設入所の話には一切応じなかった。だが、保護から約2カ月たち、しぶしぶ同意した。このままでは子どもに会えないが、子どもが施設に入れば、会うことができる、と考えたようだ。

 母親は知的能力に課題がある。ケイコは電話して、子どもたちの下着や洋服、くつなどを用意するよう、丁寧に説明した。

 翌日、ケイコが自宅を訪ねると母親はこれまでの仏頂面とは違い、ニコニコしていたという。2人にそれぞれ1箱ずつ、洋服などを入れた段ボールが用意してあった。「お母さんは悪ぶってるけど、かわいいんですよ」とケイコ。

 ケイコは用意してきた「確認書」を母親に見せた。何が問題だったのかを理解して改善してもらうため、書面にはこんなことが書かれている。

 ①子どもの前で包丁を持ち出さない。大量服薬もしない

 ②子どもはそれを怖がっている

 ③改善するために、子どもたちが施設に入所することに同意する

 ④子どもたちとの面会や電話、外出、外泊は児相の計画に従う

 ⑤関係機関と協力して支援を受けていく

 母親は素直に署名した。

 その足で、ケイコは荷物を児童養護施設に届け、姉妹にも会った。母親が施設入所に同意したことを伝えた。

 「お母さんに会いたい?」。そう尋ねると、軽度の知的障害がある姉はうなずいた。小学生の妹は「う~ん」と考え込み、すぐには返事をしなかった。

 一時保護の後、児童養護施設などに入った子どもは、たいてい親が恋しくなる。だが、保護者が行動を改めてくれなければ、家庭に戻すことはできない。そのバランスの中でワーカーは悩む。

 その10日後、ケイコは再び施…

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