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 一昨年9月に大規模な水害に遭った茨城県常総市で、浸水した土地にすんでいた虫たちはどうなったか? 昆虫好きの小学4年生が現地調査を重ねてまとめたリポートが、筑波大学の「科学の芽」賞に選ばれた。125個の標本などを元に導いた結論は「虫たちの生命力は想像をはるかに超えていた」――。

 「科学の芽」賞は小・中・高校生対象の理科コンクールで、11度目の今回は過去最多の2919点の応募の中から21点が選ばれた。つくば国際大学東風(はるかぜ)小(守谷市)4年の田村和暉(かずき)君(10)は、県内から唯一の受賞者だ。

 東風小は常総市の浸水域の南端から南に約7キロ。水害の痛ましいニュースは小学生の胸にも刺さった。同時に、校内やご近所で「昆虫博士」の異名を持つ田村君は「数日浸水した地域で生き残った虫はいるのだろうか」と疑問を抱いた。

 半年が過ぎた昨春、県自然博物館(坂東市)の企画に参加して昆虫標本の作り方などの指南を受けると、夏までに4回、捕虫網を手に被災地に通った。鬼怒川の堤防決壊地点から約800メートル離れた道路脇を調査地点に選び、虫を採取。その種類を、浸水を免れた堤防の高台と比較した。

 その結果、二つの地点の差はほとんどなかった。土の中に巣を作るアリも多数見つかったことに田村君は驚く。「女王アリは5月から6月にかけて新しい場所に飛んでいって巣を作る。5月中旬にすでに立派な巣がたくさんあったということは、浸水に耐えて残ったのではないか」

 図鑑などを読み込んで得た知識を動員し、虫たちが生き残れた理由を考察した。アリは巣の中に十分な空気が残り、コガタルリハムシは成虫が土中で休眠中、ショウリョウバッタは卵が土の中にあった――。

 導いた仮説には専門家も舌を巻く。筑波大の戒能洋一教授は「昆虫の生活史を考えて類推していて、どれも優れている。小学生でここまで観察・推察できるとは大したものだ」と話す。

 小さな「昆虫博士」は、父親の泰盛さん(47)がつくば市の研究所に勤める害虫の研究者で、母親の佳代さん(35)も大学で応用昆虫学を専攻した経歴の持ち主。自宅で何種類もの虫を飼い、日々新たな発見に目を輝かせる。「虫は人間がまねできないスゴわざを持っている」

 将来の目標は、もちろん昆虫学者だ。(吉田晋)