山口真矢子
今から10年前の冬、私の母(当時66歳)に「前頭側頭型認知症」という聞きなれない病名が告げられた。記憶は保たれるが、思考や判断、感情をつかさどる脳の部分が萎縮するため、母は別人のようになってしまった。表情豊かだった顔は能面のようになり、おしゃべりもめっきり減った。
認知症には複数の種類があるが、アルツハイマー型が最も多く、前頭側頭型は数%ほどしかないという。当時ネットで「認知症」と検索しても、出てくる情報はアルツハイマー型のものばかり。母の症状に当てはまらず、途方に暮れていた。
前頭側頭型の初期症状は、初老期のうつ病や統合失調症などと似ており、プロでも診断が難しいという。母の場合は、正しい診断がつくまで5カ月かかったが、それでも短い方だったようだ。
診断の翌月、母は「要介護2」と認定された。
妹夫婦のマンションで母が同居を始めてから、さまざまな「事件」が起きた。トイレに何度も通う常同行動に加え、異食(食べられないものを食べてしまうこと)が見られるようになった。
一つは「消しゴム事件」。白い…
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朝日新聞社会部