[PR]

 長時間労働をなくすために、様々な試みがみられます。そろって残業をしない日を決めたり、持ち帰り残業を防ぐ仕組みを導入したり。各社がどんなことに取り組んでいるのか、その中で効果があったと実感できたものは何なのか。NPO法人のアンケートから探ります。朝日新聞デジタルのアンケートに寄せられた試みも紹介します。

 長時間労働をなくすために、どんな取り組みが効果的なのでしょうか。NPO法人ファザーリング・ジャパン(FJ)が先月21日から今月8日にかけて、「イクボス企業同盟」の加盟116社(11月20日時点)に尋ねたアンケート結果があります(89社が回答)。

 実際に取り組んでいることと、その中で効果が高かったものを、40あまりの選択肢を示して質問。多くの会社がとりくんでいるのが、「経営層から長時間労働是正へのメッセージを発信」(53社)、「各人の労働時間を集計し役員会に報告。長時間労働の部署へ是正措置を求める」「新任管理職に対し労働時間管理を含む研修を実施」「有給休暇取得の進捗(しんちょく)などを管理する仕組み」(いずれも50社)、「全社毎週水曜日」など一律の「ノー残業デー」(49社)。ノー残業デーや経営層からのメッセージは、効果があったと感じた企業数でも上位に並びました。

 また、取り組んだ会社のうち「効果が高かった」と答えた割合で見ると、PCの強制シャットダウンが1位(4社中4社)。ノー残業デー(49社中27社)、再点灯不可の強制消灯(4社中2社)が続きます。

 「ある程度の上限を半強制的に設定し、型にはめることで、業務効率化を行う必要性を感じ実行に移すことができる」「強制的な退社による業務のしわ寄せや後ろ倒しなども懸念されたが、結果として、全社的な時間外勤務時間の削減につながった」などの声が寄せられました。

 選択肢になかった取り組みには「サーバー強制シャットダウン(午後8時)」「外部メールの上司転送(添付ファイル付きのメールは上司に自動転送)による持ち帰り残業の抑制」「ノー残業デーに生の社内放送を日替わりで実施(役員、本部長、部長)。話す内容もその日の担当者が決める」などがありました。

 結果について、FJは「長時間労働削減には、強制力、トップメッセージ、全員参画がカギであることが見えてきた」としています。

 イクボスとは、仕事と生活を両立し、部下にもその環境づくりをする上司(経営者・管理職)を指し、賛同企業のネットワークがイクボス企業同盟です。(三島あずさ)

個人も企業もストレス把握を

 「労働は商品ではない」

 国際労働機関(ILO)の基礎となる根本原則をうたった宣言はこう始まります。産業医科大教授の堀江正知さん(54)は、長時間労働の問題を考える時はここに立ち返るべきだといいます。「『労働者は取り換えられる』『壊れたら捨てる』。社会全体がそういう風潮になっていないでしょうか。人は、ものではないという根源を忘れてはいけない」

 長時間労働が循環器疾患を引き起こすことは知られています。最近はストレスによる健康障害の研究も進んでいます。「長時間労働と心理的ストレスによる循環器疾患、精神障害の発生は互いに関連しています」。大切なのは、そうなる前に負の連鎖を断ち切ることです。

 事態が深刻化すると、「自殺してはだめだ」という判断もできなくなります。「熟睡できない」「趣味を楽しめない」などの状態になったら、注意が必要です。

 昨年12月から、50人以上の事業所にストレスチェックが義務化されました。質問に答えることで、自分のストレス状態を知ることができます。

 「企業内外にある相談窓口でいいので、まず自分の気持ちを話して」と日本産業カウンセラー協会執行理事の田中節子さん(63)。「言いたいのに言えないこと自体がストレスになる場合がある。まず心のうちを話してもらうことが大切です」

 企業による集団分析(現在は努力義務)も重要だと言います。集団分析では全国との比較や、高ストレス者が多い部署、「仕事量が多い」と感じている人が多い部署などを知ることができます。事業所が現状を客観的に把握し、課題の解決を探る手立てになります。

 周囲の人は何に気をつけたらいいのでしょう。「顔色が悪い」「服装に構わなくなる」「あいさつをしなくなる」など、同僚の変化を見逃さないことが大切です。「いつもと違うと感じたら声をかけ、相談できる人や機関に行くよう促してください」と田中さんはアドバイスします。

     ◇

 日本産業カウンセラー協会は月~土曜午後3~8時、無料の電話相談を受け付けています。1人30分まで。03・5772・2183「働く人の悩みホットライン」(千葉恵理子)

ノー残業、職場全体で

 朝日新聞デジタルのアンケートには、長時間労働をしないための会社や個人の取り組みについて書かれたものもあります。そんな中から一部を抜粋して紹介します。

●「残業したらきりがないので定時か定時+1時間以内に帰るようにしています。至急の仕事以外は明日まででもいいか確認をとるようにしています」(静岡県・20代女性)

●「今の会社は残業代が出ない会社です。その代わり極力残業はしない流れができています。就業時間内(10時~18時)に終わらせることが求められるので、自分でやるべきことに優先順位をつけて、取り組んでいます」(神奈川県・20代女性)

●「長時間労働の根本の原因は部活と受験勉強にあると思う。どちらも長時間勉強や練習をして結果を出すことを是としている。親と教師が、というより社会全体が徹夜の受験勉強や部活の朝練や土日練習を肯定している。受験競争に勝った有名大学出身者や体育会系の部活出身者が大企業に就職する。違法残業を指摘された朝日新聞社も例外ではない。10代のうちに『長時間やることよりも、時間を区切って勉強や部活をした上で遊ぶときは遊び、結果を出すのが良いこと』という価値観で教育しないと日本から長時間労働はなくならない」(東京都・30代女性)

●「いまの職場は19時で物理的に閉まるため、帰らざるを得なくなりました。前の職場では1時2時までいることもあったのですが、一気に健康的に! 持ち帰り仕事が増える、と思っていたこともありましたが、クラウドや仕事効率化アプリの活用で、時間をうまく使えるようになりました。学校の場合は外国の体制を取り入れるべきです。ランチタイムのスタッフを雇ったり、部活動ではなく地域で好きなスポーツを楽しんだりするなど。学校って大人にも子どもにもブラックな空間であることが多いです。学校がホワイトにならなければ、これからも新たな社畜を生み出し続けることでしょう」(新潟県・30代女性)

●「公務員の管理職です。自身もこれまで、多くの時間を仕事に割いてきました。ときには体調を崩すこともありました。数年前に管理職になってからは、残業に対しては特に注意を払っています。個人との面接において、健康管理や時間のマネジメントについて意見交換をしています。また、就業時間後は地域の活動や趣味の活動、家族サービスに時間を割くよう助言しています。他部署を見ると、残業手当が青天井のこともあって、アウトプットのない無意味な残業も見られます。また、残業癖のついた職員は、どの部署に異動しても同様のスタイルで仕事をしています。ノー残業デーもかけ声ばかりです。職場全体、管理職が積極的に関与すべきと考えます」(岩手県・50代男性)

●「1人当たりの売り上げ目標を掲げている限り長時間労働は増えることがあっても減ることは無いと感じています。国の考え方としてワークシェアリングで雇用を増やしたいとハッキリ表明してもらい社会全体の目標を明確にし事業主に強制させる法令を作る。発注者にも、一定の歯止めとなるような罰則規定を設けなければ実効性は乏しい」(神奈川県・50代男性)

お互い協力できる職場の関係づくりを

 事件・事故があれば駆けつける記者や、夜勤のある編集者が長時間労働を避けるには難しい状況もあります。ただ、働き方に無駄がないか、といわれれば、改善できることもあります。

 長時間労働の原因を考えたアンケートで「長く働くことを評価する空気がある」を多くの方が選びました。入社8年目になる私も先輩より早く帰ることに気が引けて残業したことがあり、共感しました。

 今月、朝日新聞社も労働基準監督署から是正勧告を受けました。私自身、新聞社で長時間働くのは当たり前という感覚があり、無頓着さを痛感しました。自分の経験に基づいた働き方を押し通すのではなく、お互い協力できる職場の関係づくりを心がけたいと胸に刻みました。(逸見那由子)

     ◇

 ご意見はasahi_forum@asahi.comメールするか、ファクス03・5541・8259、〒104・8011(所在地不要)朝日新聞オピニオン編集部「フォーラム面」へ。

こんなニュースも