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 2021年度に導入される公的年金を抑制する新しいルールの試算で、厚生労働省は27日、賃金が下落した場合の結果を公表した。リーマン・ショック級の賃金下落でも、その後の賃金が上昇し続ければ5年後の支給額は現行ルールと比べて0・6%減にとどまる。新ルールは将来世代の支給水準を維持する狙いで、この想定なら43年度時点で0・6%増となる。

 新ルールは、臨時国会で成立した年金制度改革法に盛り込まれた。いまの支給額は賃金が下がっても物価が上がれば据え置かれるが、21年度からは賃金が下がれば物価にかかわらず減る。物価も賃金も下がれば、支給額の減少幅はより下がった方に合わせる。

 今回の試算は21、22両年度の名目賃金下落率をリーマン・ショックが起きた08年度(マイナス0・5%)、翌09年度(同3%)と同じとし、その後は賃金が上昇を続けると想定。5年ごとの財政検証で使う八つの経済シナリオのうち、3パターンを前提とした。

 支給額を計算する賃金の下落率は前々年度までの3年分の平均のため、26年度ごろに最も大きな影響を受ける。中間的なケース(実質経済成長率が0・4%増)では、26年度は基礎年金の支給額が0・6%減る。実際の支給額の試算は公表されていないが、今の年金の価値で計算すると月300~400円程度の減少になるとみられる。

 比較的成長率が低いケース(同0・2%減)では支給額は0・9%減る試算となり、比較的成長率が高いケース(同0・9%増)なら0・2%減に収まる。

 いずれのケースも財源が浮くため、将来世代が受け取る額は現行ルールより増える。最も影響が大きくなる時期は支給額が増えた時に伸び幅を毎年1%程度抑える「マクロ経済スライド」の終了時点。高成長ケースなら42年度で0・2%増、中間的なケースなら43年度で0・6%増、低成長ケースなら58年度時点で2・5%増となった。それ以降の支給水準は一定になる。

 賃金の下落幅をリーマン・ショック時の半分で試算したところ、3パターンとも新ルールは適用されず、支給額に影響はなかった。

 改革法案の国会審議をめぐり、厚労省は10月に05年時点で新ルールが適用されていた場合の試算を公表した。だが、賃金が上昇し続ける前提で、民進党が反発して新しい試算の公表を求めた。27日に開かれた民進党の会合では「なぜ賃金が下がるのが2年だけなのか。リーマン・ショック前後も下がっており、前提が恣意(しい)的ではないか」などと疑問視する意見が出た。

 日本総研の西沢和彦主席研究員は「足元の年金水準が低下すれば、将来改善するのは当然だ。実際には賃金が増減を繰り返す事態が起こりうる。19年に予定される次の財政検証では専門家の意見を聴いて現実に近い前提を出してほしい」と指摘。その上で、アベノミクスで賃金上昇をめざす安倍政権が試算の公表に消極的だったことも踏まえ、「試算は政治とは距離を置いてもらいたい」という注文もつけた。(井上充昌)

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