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 この冬もノリの収穫シーズンを迎えた。昨年末からは各地で入札会も始まっている。生産量はまずまずのようだが、養殖業者らの心配は尽きない。最近、養殖場付近の海面の温度が上がっていることが影響しているという。

近海の変化、内湾にも

 愛知県半田市にある県漁連海苔(のり)流通センターに昨年末、ノリの束が詰まった段ボールが400個以上並べられた。広がる磯の香り。全国の業者約200人が入札会で品定めをしていた。

 ノリ養殖は冬から翌春がシーズンで、愛知県産のノリの入札会も昨年12月から始まった。「海の環境が良好で順調」と県漁連販売課の早川明宏さん(47)。ただ、「気は抜けないです」と慎重だ。

 10年ほど前からカモの食害対策に追われているという。大井漁協(同県南知多町)でノリ養殖をする山下芳弘さん(69)は「対策をしていない養殖業者の生産量は今のところ、している業者の5~6割」と話す。

 要因の一つは海面の水温上昇だという。県漁連によると、ノリの網を海に入れて育て始めるのは水温23度未満になる9月下旬だった。だが、約20年前から水温がなかなか下がらず、10月中旬にずれ込んでいる。

 贈答用の高級品に使われる柔らかいノリの収穫期も遅れて11月中旬に。このノリが、越冬で10月下旬に飛来したヒドリガモに狙われている。同じノリから多くて10回近く収穫できるが、カモは根の部分まで食べるので以降は育たなくなる。高齢化などで養殖業者が減り、養殖場所が縮小したことも影響しているという。愛知県産が全国生産量に占める割合は約4%。県漁連によると、カモの被害だけではないが、2012年のシーズンから生産量は毎年減少が続き、15年のシーズンは12年より約2割減った。

 大井漁協では対策として、ロケット花火で追い払ったり、カモが届かないよう海中の網を1メートルほど沈めたりしている。15年と16年には計約100羽の駆除を猟師に依頼するなどして被害の拡大は抑えている。

 愛知県水産試験場の調査では、県内沿岸の海面の水温は20年前より高い。1991~95年と11~15年の9~12月を比べると、平均で1・4度高い。気象庁によると、過去100年間で日本近海の年平均海面水温の上昇は1・07度。担当者は「ノリが養殖される内湾は、潮の流れや河川の流入など条件は違うが、日本近海の変化が内湾に影響していると考えられる」と説明する。

各地で被害相次ぐ

 水温上昇の影響とみられる被害は各地で相次ぐ。

 ノリの生産量は有明海と瀬戸内海で全国生産量の約85%を占める。全国の4分の1を占める佐賀県では昨シーズン、病害の影響で最初の入札会に出されたノリが過去10年で最少だった。県有明海漁協によると、水温低下が進まず、雨が多く海面の塩分濃度が薄まったこともあってノリが変色したり網から外れたりした。海域全体での発生は珍しいという。高級品向けのノリの生産に影響し、前年比で生産量が3割減。今シーズンの生産は順調だという。

 千葉県では、昨シーズンの生産量が前のシーズンよりも3割以上落ち込んだ。水温が低くなると暖かい海域へ移動するアイゴやクロダイなどが、冬でも東京湾内で見かけられた。これらの魚の胃にノリが確認されたことなどから、魚の食害が疑われているという。

 全国海苔貝類漁業協同組合連合会の総務部長は「水温や栄養分のデータに基づいた管理、高水温や病気に強い品種の開発に努めてほしい。『今まで通りで大丈夫』ではない」と呼びかける。(野口憲太)

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