北林晃治
インフルエンザの流行が全国的に注意報レベルに達した。今後、流行のピークを迎えることが予想され、厚生労働省が警戒を呼びかける。大学入試センター試験を目前に控え、感染のリスクを減らすには、どんな対策があるのか。子どもが重症化を防ぐために気をつけることとは。専門家に聞いた。
インフルエンザは例年、年末から3月にかけて流行し、少ない年で数百万人、多い年で1500~1600万人ほどが感染する。感染者のくしゃみやせき、つばなどのしぶきを吸い込むことで感染が広がる。厚生労働省の「インフルエンザQ&A」(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html)は、有効な予防策として、マスク、手洗い、ワクチンなどを挙げる。
感染症に詳しい川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は「いずれも、感染を必ず防げるものではないが、できる限りの予防策をして、それでもかかってしまったら、重症化しないよう早めの医療機関の受診を心がけてほしい」と話す。
マスクは、ウイルスを含んだしぶきを吸い込むことを完全には防げないが、かなり有効だという。また、感染者がマスクをすることで周囲の人にうつさない効果が期待できる。流行期にはいつ誰が発症するか分からず、感染しても症状がはっきりしないこともある。「人混みに出る場合は症状があってもなくてもマスクを着用するといい」とする。
手洗いやうがいについても「インフルエンザ特有の対策というより、手指や口の中をきれいにして感染症を防ぐという意味では、やらないよりやった方がはるかにいい」と岡部さん。アルコール製剤による消毒も有効だ。
インフルエンザウイルスは、毎年のように少しずつ変異し、ワクチンを打っても感染することは少なくない。厚労省は「ある程度、発症を阻止する効果があり、感染しても重症化を防ぐことができる」とする。ワクチンの効果は、接種の2週間後から出始め、5カ月間ほど持続するという。12月中旬までに打った方がいいとされるが、今からでも間に合うのか。
日本小児科医会の会長を務める東京都文京区の小児科医・松平隆光さんは「インフルの流行は5月ごろまで続くこともあり、今から打っても、ある程度効果は期待できる。接種を希望する人は、まだ間に合うので、小児科医など医師に相談してください」とする。
それでも感染してしまったらどうすればいいのか。 インフルエンザは、38度以上の熱や、頭や関節の痛み、倦怠(けんたい)感など、全身に症状が急速に出る。1週間ほどで回復することが多いが、松平さんは「普通の風邪より症状が激しい。子どもが急性脳炎・脳症を発症したり、高齢者や免疫力の低下している人が肺炎を合併して重症化したりすることもあり、軽く考えない方がいい」。
特に子どもに次のような症状がある場合は、すぐに医療機関を受診した方がいい。厚労省の資料によると、けいれんや呼びかけに応じない▽呼吸が速く苦しそう▽顔色が悪い▽嘔吐(おうと)や下痢が続く▽症状が長引き悪化してきた――。「けいれんが、10分以上続いたり、同じ日に何度も繰り返したりする場合にもすぐに受診を」という。
そうでない場合も、地域で流行していて、高熱などインフルを疑う症状が出たら、早めに内科や小児科を受診し、睡眠を十分にとって安静にすごす。高熱で汗をかき、脱水症状になるおそれもあるので、こまめな水分補給もこころがける。発症から48時間以内に服用すれば、熱が出る期間を2~3日短縮できるタミフルなどの抗インフル薬も治療には使われる。
松平さんは「普段から十分な睡眠やバランスのとれた食生活を心がけ、免疫力を高めることが、流行期を乗り切るには大切だ」という。
<アピタル:ニュース・フォーカス・オリジナル>
科学医療部記者。02年入社、北海道報道部、さいたま総局、東京本社生活部、社会部、特別報道部などで医療など社会保障分野の取材を担当。
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