[PR]

 今回は正しい「手洗い」についてお話しします。

 世界保健機関(WHO)が病院スタッフに推奨している手洗いのタイミングは、①患者への接触前②清潔な状態で行わなければいけない処置の前③体液(血液、尿、便、喀痰(かくたん))に接触した可能性のあるとき④患者への接触後⑤患者周辺の物品に触れた後――です。

 家庭では、①帰宅したとき②料理・食事の前③トイレの後④病気の人がいれば、その人のお世話の前後、などでしょう。

 次に手洗いのやりかたですが、水だけの手洗いはかなり効果が弱いのでせっけんを使いましょう。せっけんは、固形ではなく、「ポンプ式液状せっけん」をお勧めします。固形せっけんの表面には菌がたくさんついているからです。ただし、ポンプ式であってもせっけんの継ぎ足しは駄目です。何回も継ぎ足しで使っているとそのポンプ自体に菌がすみつきます。いったん容器を空にして乾燥させればいいのですが、ちょっと面倒ですね。

 さて、せっけんで手を洗う時間ですが、せっけんによるもみ洗いに10秒、洗い流しに10~20秒が推奨されています。これは実際やってみるとかなり長く感じます。例えば、「もしもしカメよ、カメさんよ」をゆっくり歌っても20秒くらいです。病院では実際にこの歌詞を洗面所の壁に貼っている所もあります。一度みなさんも歌いながら手を洗ってみて下さい。

 一般家庭で一番難しいのは洗った手を拭くものです。タオルを共有して使う場合が多いと思いますが、それで拭いてしまうとせっかく手洗いしても実はタオルから多くの菌が手についてしまいます。菌は湿ったところが大好きなのです。理想は使い捨てのペーパータオルですが、共有タオルの場合は最低でも1日に1回は交換した方がよいでしょう。

 さらに注意が必要なのが、トイレの後の手洗いです。

 一般家庭のトイレには必ずドアがありますね。そのドアノブにはたぶん多くの菌がついていますので、手洗いはドアノブを触った後に行う方が効果的です。そこでお勧めなのはアルコール消毒です。最近は薬局で手洗い用アルコールジェルを売っていますので、その使用をトイレから出た後の習慣にするとよいでしょう。

 一般家庭で普段からこのような手洗いを常に行うのは難しいと思いますが、家族に下痢をしている人や、病気で体の弱い人がいる場合は実践することをお勧めします。

 今回お話しした「手洗い」は残念ながら「接触による感染」の予防策に過ぎません。もちろんこの「接触感染」予防が感染予防の大原則なのですが、感染の経路には「接触感染」のほかにも、「飛沫(ひまつ)感染」や「空気感染」といった、さらに防御するのが難しい感染経路があります。それについては次回にお話しします。

医療従事者の手洗いのタイミング(WHOガイドライン)

①患者に触れる前

②清潔な状態で行う必要がある処置の前

③血液、尿、便などの体液に触れた可能性がある場合

④患者に触れた後

⑤患者周辺の物品に触れた後

<アピタル:弘前大学企画・今こそ知りたい! 感染症の予防と治療>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/hirosaki/(弘前大学大学院医学研究科臨床検査医学講座准教授 齋藤紀先)