地球維持する取り組み、伝えたい 国谷裕子さん

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 「地球は人間なしで存続できても、私たちは地球がなければ存続できない。先に消えるのは、私たちなのです」

 SDGsのとりまとめに奔走したナイジェリア出身のアミーナ・モハメッドさんから聞いたことばが忘れられません。

 先ごろ国連の副事務総長に抜擢(ばってき)されたアミーナさんは、故郷でチャド湖を見ながら育ちました。けれども、彼女が子どものころ海だと思っていた琵琶湖の40倍もある大きな湖は、今は温暖化と灌漑(かんがい)の影響で消滅の危機にあります。

 このままだと地球がもたない。その危機感から各国が共同で変革に取り組んでいくために産み出されたのが、SDGsです。

 2年半に及ぶ多国間交渉でようやくまとまった国際合意なのですが、私は2015年9月に国連総会で採択される直前まで知りませんでした。番組作りのためいろいろなアンテナを張って情報収集をしていたというのに、動きがあることすら知らなかった。とても恥ずかしく思いました。

 採択目前に取材に入ったニューヨーク。SDGsの合意形成に関わった人たちの間には、地球の限界が見えてしまっているという危機感が共有されていて、SDGsを手がかりに、世界を変えていくのだという強い思いを感じました。

 けれども日本では、SDGsは積極的に取り上げられませんでした。1年以上たった今も、よく知られていません。どこまでできるかわかりませんが、SDGsを伝えていく使命を感じています。

 ニュースキャスターとして16年3月まで23年間、日本社会の課題と世界の変化を追いながら、ありとあらゆるテーマに切り込みました。そうしたなかで、ひとつの問題に向き合って解決策だと思ったことが、別の問題を引き起こすことがあり、課題解決の難しさを実感することが多くなっていました。

 そんな私にとって、SDGsとの出会いは、とても新鮮でした。地球を維持していくための17の目標から逆算して、必要な行動を考える発想。互いに深いところでつながっている課題を解決するために、経済、社会、環境などをつなげてとらえ、統合的に解決していく手法。かつてない意欲的な取り組みに、大きな可能性を感じています。

 SDGsに合致しているかどうかを問うことが、政治や経済、生活のありようを変えていく糸口になります。私たちは「新しいものさし」を、手に入れたのです。それを使いこなしていくことは、政府だけでなく、企業や市民にも求められています。

 目標の達成に向けて、日本が弱いと指摘されている分野があります。貧困やジェンダー、エネルギー、気候変動などです。一人ひとりの認識が変わらなければ、達成は遠のくばかりではないでしょうか。

 情報の発信と共有が必要です。私もメディアの一員として、SDGsを広めていくお手伝いができたらと思っています。

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