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 「女子力」はどんな意味合いで使われているのか。目指したい「女子力」は。アンケートの1621回答から、様々な印象や期待、拒否感が一つの言葉の中でせめぎ合っていることが浮かび上がります。自分たちの思う「女子力」をアピールしようとして思わぬ拒否反応にあったNGO、女性自身の手で新たな「女子」像を、という試みを紹介します。

 昨年11月、「新・女子力テスト」という動画がツイッターで「炎上」し、公開が中断されました。つくったのは、長年おもに発展途上国で女性の命と健康を守る活動をしてきた国際協力NGO「ジョイセフ」。「女子力」を用いて何を伝えたかったのか。小野美智代・市民社会連携グループ長(42)に聞きました。

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 動画は、出演した若い女性たちに避妊などに関する知識をクイズ形式で出題。不正解だと、テレビ番組で時折見るように粉をかけ、「真の女子力で幸せつかめ」というメッセージで締めくくる内容でした。

 誰もが知っている「女子力」という言葉を入り口にして、「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康/権利)」という考え方を広めるのが目的でした。日本ではまだなじみが薄い言葉ですが、子どもを産むかどうかや、いつ、何人産むかなどを決めるのは女性の基本的な権利だとする考え方です。

 実現のためには、まず女性が自分の体に関する正しい知識を持つことが必要です。動画には、食事の席でサラダを取り分けるといった「女子力」ではなく、自分の体や健康について知り、自分を大切に、人生を自分で決められる「女子力」に気づいてほしいという思いを込めました。

 公開から約8カ月後の11月、動画の内容に不快感を示すツイートがきっかけとなり、批判が多数寄せられました。不正解だった女性を罰する意図は全くありませんでしたが、「避妊は女性だけの役割なのか。女性だけが粉をかけられるのは不快だ」といった意見が中心でした。

 さらに、「女子力、女子力とうるさい」「信頼していた団体が、こんな軽い言葉を使うとは」など、批判の矛先は「女子力」にも向けられました。その背景として、「女子力」という言葉によって生きづらさを感じている女性たちが多くいることも痛感しました。

 思慮が至らなかった点を深く反省し、今後は女性だけではなく、男性や社会への働きかけもしていきたい。「女子力」という言葉でくるまずに、私たちが本当に広めたい「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」という言葉と考え方を、直球で伝えていきたいと思っています。(聞き手・三島あずさ)

男性目線の物作り、変えたい

 ファッションやメイク、ネイル、レシピなどの情報を配信する女性向け動画マガジン「C CHANNEL」(https://www.cchan.tv/別ウインドウで開きます)は、メディアの「女子」像を変えるのが狙いだといいます。日本テレビ放送網などを経てLINEの社長を務めた後、15年にC CHANNELを立ち上げた森川亮・C Channel社長に聞きました。

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 目指しているのは、元気な女性が何にも縛られることなく、自分の言葉で発信してトレンドをつくり、世の中を変えることです。

 動画を自ら撮影して投稿する「クリッパー」の女性が約500人います。八頭身のスーパーモデルというよりは、身近な感じの方が多い。毎日約80本の動画を配信します。

 ネット時代では、自分自身の言葉を持っていないとファンがつきにくい。台本がなくても自分の言葉で語れる方を集めて、教育もしています。内容を指示したりチェックしたりせず、彼女たちが自由にテーマを決めて撮影、編集、配信します。

 これまでのメディアでは、タレントは事務所の基本方針にのっとって活動する。あまり自由な発言ができないんじゃないかと思います。

 メディア業界では男性比率が高く、男性が求める女性像に押し込みがちなところがある。男性目線で物作りをしているんですよね。

 女子力という言葉に窮屈さを感じるのは、日本の男性社会の中で、言い過ぎちゃダメ、やり過ぎちゃだめとか、気を使って生きている方が多いからではないかと思います。

 日本のメディアを変えたかったんです。文字から写真、動画へ、またパソコンからスマホへとシフトする中で、スマホ向けの動画メディアをつくろうと思いました。女性の方がスマホを使う頻度が高いので、女性向けに。ファッション雑誌の動画版をイメージしました。

 日本以外に韓国、中国、台湾、タイ、インドネシアで展開しています。今月、国内外で月間4億再生に達する見込み。ユーザーの多くは20~34歳の女性です。

 C CHANNELを、日本の女性が自分の言葉で発信し、世界で活躍できるプラットフォームにしていきたい。今アジアでは韓流ブームですが、日本のコンテンツが世界に出ていくことで日本の文化に憧れる人が増えて、日本が元気になればいいなと思っています。(聞き手・林亜季)

アンケートに寄せられた声

 第1回のアンケートに寄せられた、この言葉へのもやもやの一部です。

●「『女子力』を求められると、『ガサツなんです』『〇〇さん(男性)の方が女子力高いです』などと、実際とは異なる『女子力』低い自慢をしてしまいます。馬鹿なことをしている自覚はあります。『あなたは他人をあれこれ品評できるような身分じゃないですよ』と教えてあげたほうが、本当は親切なんだろうと思います」(東京都・20代女性)

●「『女子力』は呪いの言葉。女性の行動を、時には男性の行動も、制御しようとする意図を感じる。料理や掃除といった家事の能力、気配りができるといった配慮、そういうものを『女子力』と呼ぶことは、裏を返せば、男性は家事ができなくても、自分勝手に振る舞っても許されると言っているようなもの。そのためには、家事の能力や気配りにたけた男性を『女子力が高い』例外と称して、自分たちの性の枠から押し出そうとする。『女子力高いね』『女子力低いね』と口にする側の根底にあるのは、自分が相手の価値を評価する側だという気持ちの悪い目線だと思う」(福岡県・30代その他)

●「女子力って結構気軽に使ってきた言葉だったけど、みなさんの意見を読んで、いじめにも褒め言葉にもなる、ある意味恐ろしい言葉なんだなと思いました。もうすぐお父さんになる友達と食事に行ったとき、珍しくお鍋を取り分けてくれたので、『女子力高いね』と言ったら、『女子力じゃない、パパ力だよ』との切り返しに思わず拍手を送りたくなりました。女子力という言葉を使われて嫌な気持ちになったら、こういう〇〇力に当てはめて切り返すのもありなんじゃないでしょうか」(福島県・20代女性)

●「女性の中に『女子力』という言葉を楽しめる方と憎悪する方の両方が居るのは、周りから『自分自身』を尊重されているかどうか、そこに差があるからではないでしょうか? きちんと尊重されていれば、『女子力』の高さを素直に喜べたり、逆に低いと言われても気にせずにいられるようになれるのでは。社会の中にきちんと個人の人格を尊重する空気を作ること、それが一番大切だと思います」(東京都・20代男性)

●「対になる『男子力』とは何かを考えると、『外で働き妻子を養える経済力』だったのだと思う。男性だけに経済力を求めるのが難しい社会になってきたところで『女子力』ばかり注目されることに憤りを覚える。男女の役割の違いが小さくなっている以上、個々の人間性を評価する社会を目指したい。そのためには男女問わず生活力(経済力や家事力)があって、精神的にも自立した人が増えていかなくてはいけないと思う」(東京都・40代女性)

●「社員食堂のメニューがあまりにまずいので、職場にお弁当を持参したら『いいカミさんになるぞ』『女子力高いな』と男性社員に言われてモヤッとした。自分の楽しみのためにやる家事やメイク、ファッション……全てが『未来の旦那様のための力』という意味合いでの『女子力』に回収されてしまう。女性自身が自分の価値観で、自分の人生を楽しむことを許さない風潮と、それに対するエクスキューズとしての便利な言葉が『女子力』なのではないか」(東京都・30代女性)

 ◇性別の選択肢に「男性」「女性」のほか「その他(どちらでもない・決めたくない)」を設けています。

女の子へのメッセージを募集します

 朝日新聞は3月8日の「国際女性デー」に合わせ、次代を担う女の子が自分らしく生きられる社会を目指すための企画「Dear Girls」を始めます。性別にとらわれず、「なりたい私」になれるように。みなさんから、女の子たちや社会に向けた「ひとことメッセージ」(30字程度)を募集します。氏名、年齢、そのひとことを伝えたい理由も書き添え、メールdeargirls@asahi.comメールするへお送り下さい。朝日新聞の紙面やSNSなどで紹介させていただく場合があります。

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 アンケート「『女子力』の正体」をhttp://t.asahi.com/forum別ウインドウで開きますで実施中です。ご意見はasahi_forum@asahi.comメールするでも募集しています。