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 男子なのに「女子力が高い」と言われる。そんな場面が、朝日新聞デジタルのアンケートにいろいろ寄せられています。「女子力男子」も知られるようになりました。元サッカー日本代表の前園真聖さんはそう呼ばれることがあります。ジェンダーを超えて女子力が用いられるようになったことを、どう考えればいいのでしょうか。

 元サッカー日本代表の前園真聖さん(43)は「女子力男子」「スイーツ男子」などと紹介されます。テレビ番組やイベントで言われるようになったのは2年くらい前。ツイッターやブログで「今日のプリン」などとお菓子の写真をアップしたことがきっかけだったそうです。

 今や「1年間に食べるプリンは300個」。制限があった現役時代も甘い物好き。でも当時はあまり公言しませんでした。「世間が僕に持つこわもてなイメージに合わない、スイーツを食べるのは格好悪いかも、と勝手に壁を作っていました」

 転機の一つは、あの事件だったかもしれないと振り返ります。2013年に酒に酔ってタクシー運転手に暴行し、約4カ月謹慎。「また人前に立てる時がきたら、飾らない自分を見てもらおうと思った」と言います。「スイーツや半身浴の話も自然にできたほうが楽。周りも僕という存在を扱いやすくなったのかなと思います」

 前園さんは「女子力への印象はそれぞれの価値観によって違う」と前置きして、こう話しました。「サラダの取り分けが女子力高いとは思わない。その場の上下関係でやる人がやるもの。料理が得意なこともお菓子も、好きな人は好き、ということ。世間のイメージにとらわれないで、自分の素を出したほうが楽。男が甘い物を食べるのも、普通じゃないですか」(滝沢卓)

未知の世界、知りたくて

 都内の会社員、佐々木遼介さん(23)は自らを実験材料に女子力を研究、考察してきたと言います。大学生だった2年前、「男1人で『おうち女子会』は成立するのか」という体験記をブログで公開しました。

 元々、「居酒屋で騒ぐよりアフタヌーンティー」派。女子会がうらやましく、男友達を誘ったものの断られて、1人で開くことに。ハート形の風船にアロマ、カップケーキやマカロンを用意しました。

 その後も、女子力を高めようと女性ファッション誌を読んでみました。「女子力が高いね」と言われることがありますが、自分では「女子力男子」だとは思いません。

 最近の女子力の使われ方は、①女性同士の「ネタ」や皮肉②女性の気配りに男性から③手先が器用だったり料理上手だったりする男性に対し、という3種類に大別できると気づいたそうです。②には不快感を示す女性が多く、「女子力のデフレが起きている」と感じます。

 なぜ、女子力にひかれるのか。「女性という未知な対象にひかれるとともに、僕の心の中に、女子的な何かがあるのではないかと感じています。でも多くの男性は、その何かを無意識に排除してしまう。女子力という言葉を起点に、ジェンダーの多様性についての議論が深まればいい。かつて女子力を探し求めた一人の男として、そう思います」と佐々木さんは話します。(山本奈朱香)

価値観多様化、象徴する存在

 「女子力男子」とは「従来、女性がやっていたり、得意とされたりした領域の力が備わっている男性」。2014年に出した「女子力男子」に、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーの原田曜平さん(39)はそう書きました。

 20代前半が中心の男性81人をインタビュー調査し、アロマ男子、スイーツ男子、化粧ポーチ男子など、様々な「女子力男子」を紹介。こうした男子が新たな消費市場を作っているといいます。

 「女子力という言葉自体はポジティブでもネガティブでもない」と原田さん。使われる意味合い、受け止める人の性別や年代によって印象は変わるといいます。男性に「女子力が高い」などと使われることについて、「昔は女々しい、気持ち悪いと言われたことが徐々になくなってきているとも言える」と話します。

 「女子力男子」の存在は「価値観が多様化した成熟社会の象徴の一つ」。女子力が性別による役割分担の印象を与える一面があることについて「そうした前近代的な意味での女子力を男性がつけてきているのなら、女子力男子たちの存在は、社会が前近代から脱しつつあるという表れだと思います」。(滝沢卓)

性的少数者の受け止めは

 「女子力男子」という言葉について、セクシュアルマイノリティー(性的少数者)の人たちはどう感じているのでしょうか。

 東京都内に住む同性愛者の男性(33)は、スキンケアに気をつかい、彩りに配慮した弁当を作ります。でも、公言しません。周囲にはカミングアウトしておらず、「ゲイなのでは」と思われるのが怖いそうです。子どものころ、女の子と一緒に遊んで「女っぽい」といじめられたことがトラウマになっています。だから、「『女子力高いね』と言われるとどきっとしますね」。

 一方で救われることがあるかもしれない、と思います。切羽詰まった時、「僕、女子力高いんで」と切り返せば納得してもらえるかな、と考えています。

 ゲイだと公言している大学4年生の松岡宗嗣さん(22)は、飲み会でサラダを取り分けた時などに「女子力が高い」と女性から言われるそうです。褒め言葉とは感じますが、遅刻ばかりしている生徒がたまに時間通りに登校すると「すごい!」と褒められるのと似ている気がします。

 モデルのりゅうちぇるさんら、ジェンダーレス男子と呼ばれる人が出てきて、「男性が女性的な言動をすることの許容度は高まっている」と感じます。「だからこそ、既存の女らしさ、男らしさイコール、女子力、男子力、みたいなカテゴリーの中で優劣を作るのではなく『自分が一番落ち着くスタイルはコレ。他の人のスタイルが違っていても、それはすてきだ』と言い合えるようになると良いなと思います」(杉山麻里子)

女の子へのメッセージ募集

 3月8日の「国際女性デー」に合わせ、朝日新聞は次代を担う女の子が、性別にとらわれず自分らしく生きられる社会を目指すための企画「Dear Girls」を始めます。みなさんから、女の子たちや社会に向けた「ひとことメッセージ」(30字程度)を募集します。氏名、年齢、そのひとことを伝えたい理由も書き添え、メールdeargirls@asahi.comメールするへお送り下さい。朝日新聞の紙面やSNSなどで紹介させていただく場合があります。

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 アンケート「『女子力』の正体」をhttp://t.asahi.com/forum別ウインドウで開きますで実施中です。ご意見はasahi_forum@asahi.comメールするでも募集しています。

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