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西口洋平さん(37)

 「いまは告知って本人にするんですか」。2年前、胆管がんと診断されたとき、そう尋ねるほど病気はひとごとだと思っていた。

 半日かかると説明された手術は、2時間で終わった。転移があり、がんを切ることができない。腹はすぐに閉じられた。最も進行したステージ4だった。

 今まで通りに人材紹介会社で営業職を続けられるか。一人娘の小学校の入学式に出られるか。

 未来が何も見えなくなった。

 「とーちゃんは、てんてき、がんばって」。2カ月半後に仕事へ復帰するまでの入院中、娘の手紙に励まされた。家族の支えはありがたかった。でも孤独も感じた。

 会社でどう振る舞う? 子どもに伝える? 郷里の親は?

 同年代の患者がどうしているか知りたかったが、病院内を見渡しても年配者ばかり。「将来、ほかの人が同じ悩みを抱えないように」と昨春、交流サイト「キャンサーペアレンツ」を開いた。

 「患者同士を結び、声を社会に届けるのが自分の最後の仕事」。活動時間をつくるため、願い出て正社員からアルバイトに。抗がん剤治療と本業の傍ら、全国各地で仲間を520人に増やした。

 体の中に残るがんが怖くないといえばうそになる。けれど、前を向くと決めた。18歳未満の子どもがいるがん患者は年5万6千人。つながるべき相手が、まだ大勢いる。

<アピタル:ニュース・フォーカス・ひと>

http://www.asahi.com/apital/medicalnews/focus/(文・熊井洋美 写真・西畑志朗