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 今回は風疹のお話です。

 風疹はせきやくしゃみでウイルスが伝播(でんぱ)する飛沫(ひまつ)感染で、2~3週間の潜伏期間の後、全身の発赤疹とリンパ節の腫れ(とくに耳の後ろ、後頭部、首の部分)が生じるのが典型的な症状です。しかし、ごく軽症で済むことも多く、発熱は約半数で見られる程度です。そのため、自分が風疹だと気づかずに治ってしまうこともよくあるのです。

 本人が気づかないほど軽症で済むのはいいことですが、周囲の人たち、特に病院にとっては大変厄介なことになります。例えば弘前大学医学部では、医学科や看護学科の学生が風疹患者と濃厚に接触したことが分かった場合、本人が発症していなくても3週間は登校を禁止することが決められています。

 空気感染する麻疹(はしか)や水痘(水ぼうそう)についても同様の対応をとります。これは、いつの間にか学生の間に感染が広がって、病院実習などで患者さんにうつしてしまう危険性を考慮した対策です。

 風疹でとくに怖いのが妊婦さんへの感染です。妊婦さんが風疹ウイルスに感染すると、たとえ本人が病気を発症しなくても、胎児に「先天性風疹症候群」という重大な障害をもたらしてしまう可能性があるのです。

 風疹には感染後の治療法となる抗ウイルス薬がなく、MR(麻疹風疹混合)ワクチンの予防接種が原則です。ただ妊娠中の女性はワクチンを打てないため、家族や医療者らの感染防止が重要となるのです。

 国の調査によると、風疹の免疫がない20~40代の男性は15%もいると報告されています。

 2013年に日本で風疹が大流行しました。国立感染症研究所の公表データによると、この年に全国で発症した風疹患者の数は1万4344人でした。12年は1年間で2386人、11年はわずか378人だったことを考えると、13年の患者数がいかに多かったかがわかります。

 13年の流行地域は、大阪、東京、神奈川など近畿地方と首都圏が中心で、青森県では幸い8人とかなり少なかったのであまり話題にならなかったかもしれません。この時の患者は、風疹の定期予防接種を受けなかった人が多い20~40代の男性が多く、患者全体の83%が男性でした。

 当時、厚生労働省は「12年は日本人の出国者数が過去最高を記録した。海外で風疹ウイルスに感染して帰国した人が多かった可能性があり、それをきっかけに13年は感染拡大が進んだのでは」と考察しました。

 しかし、海外渡航者は年々増えており、15年の風疹患者は全国で163人と急に少なくなったところを見ると原因がそれだけとはちょっと考えにくく、1人か数人の感染者が人の集まった状況下で周囲の大勢の人にまき散らしてしまった可能性が高いと考えられます。

<アピタル:弘前大学企画・今こそ知りたい! 感染症の予防と治療>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/hirosaki/(弘前大学大学院医学研究科臨床検査医学講座准教授 齋藤紀先)