[PR]

 学問の神様、菅原道真公をまつる榴岡天満宮(仙台市宮城野区)そばに、土日だけ開いている風変わりな文具店がある。主の男性(51)は震災の際、しょぼくれた大人に元気をくれた子どもたちを見たのがきっかけで開店を思いついた。次は僕らが子どもにやる気を出させる番と、参拝帰りの生徒らに進んで受験の心構えなどを説く。

 天満宮から小道を挟んだマンション1階の「梅鉢屋」の店頭には、「勉強がはかどる文具店」と書いたのぼりが立つ。4日、参拝ついでに立ち寄った小学生らに、シャープペンシルを持った男性が自ら話しかけた。振ったら芯が出る様子を見せ、「ノックする手間が省ける分、勉強の時間に回せるよ」。

 男性の本業はサラリーマン。だから、店を開けるのは週末と正月三が日に限られる。

 わずか10平方メートルの店内に並ぶノートや鉛筆など約300点の中で、受験シーズンの今は、やはり合格祈願グッズがよく売れる。

 鉛筆などに巻くと御利益があるという五角形のオリジナル「合格シール」。足が2本生えた消しゴムケースは「滑らない、落ちない」ようにとの願掛けだ。車のシート製造業者と発案した「沈まない」クッションもある。

 震災の翌日、男性は少し離れた自宅から天満宮そばの実家に身を寄せた。ガスも水道も止まり、余震もやまない。境内には不安を隠しきれない大人たちが集まっていた。

 一方、鬼ごっこ遊びも水くみ作業も笑顔の子どもたち。小さいなりに気を使い、努めて明るく振る舞う様子に、「大人がうつむいてはいられない」。しゃんとしなければという気構えを教えられた。

 どうやって恩返ししようと考えた時、もともと好きな文房具を接点にして悩んでいる子どもたちに助言などができればと、震災2年後の9月、マンションの空き室を借りて店を開いた。

 開店して間もなく、おどおどと参拝から帰る中学3年の男子生徒を見つけた。「神頼みではだめ。もう一度参って、『絶対受かります』と約束してきなさい」と声をかけた。

 約束した以上、勉強するしかないだろ? 奮起を促したかった。翌春、生徒は志望校合格を報告に来た。

 こわばった様子の受験生を見かければ、「1秒吸って2秒吐く。2秒吸って4秒吐く。それが深呼吸」と教え、緊張をほぐすため、逆に「緊張している」と声に出すよう教える。

 おせっかいかもしれないが、二礼二拍手一礼の参拝の仕方を教えることも。それもこれも、文具を大型店やネットで買う今の時代に子どもとのコミュニケーションを大切にしたいとの思いからだ。

 開店日も少なく、もうけにならないボランティア営業。でも「評判になれば、子どもや親がたくさん来てくれる。まちをにぎやかにするのにも役立ちたい」。(桑原紀彦)