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想いを込めて:2 短歌

 《蟬(せみ)しぐれあの日ながらにひびきくる斃(たお)れし人らを忘れさせじと》

 神奈川県鎌倉市の慶応大名誉教授の三浦冨美子さん(88)=2012年掲載=は昨秋、第三歌集「四七七一(しなない)」(角川文化振興財団)を出版した。4年前に亡くなった夫との何げない会話や自宅の庭の様子、歌舞伎見物、孫の成長など日々の穏やかな暮らしがつづられる。その中で原爆の歌は異彩を放つ。

 爆心地から2・8キロの勤労動員先で被爆した。ガラスの破片が両腕に突き刺さって血だらけになったが軽傷とされ、治療も受けられなかった。被爆直後には吐き気やだるさがあったものの、その後の米国留学や大学教員としての日々は、「原爆を受けたことすら忘れたようだった」と振り返るほど元気だった。

 しかし40代半ばで乳がんの手術をして以降、肝臓や直腸など次々とがんに侵され、これまで10回の手術をした。7回目の手術を受けた約20年前、短歌を始めた。死をすぐそこに感じ、「自分の存在を言葉にして残したい」と思った。体力的に長文は難しく、英米文学者として日本の詩や短歌の英訳の経験が豊富だったことから、短歌に託した。

 「今更、原爆でもないでしょう」「また原爆」と周りの歌人から批判されることがある。「そんなこと言えるのは原爆を体験していないからですよ」。朗らかな表情が一変し、語気が鋭くなった。「蟬しぐれを聞けば、原爆が思い浮かぶ。原爆は思い出すものじゃなくて、今も一緒にあるものなんです」

 原爆を「第二の誕生日」と言う…

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