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 埼玉県熊谷市の元荒川上流部だけにすむ「県の魚」ムサシトミヨの推定生息数が、昨年2月の現地調査で2千匹台と、2011年に行われた前回調査の1割前後にまで減っていたことが分かった。天敵による捕食や巣の材料にしたり隠れたりする水草の減少が原因と考えられる。実際の生息数が推定値の通りなら深刻な状況で、市や地元の保護団体などが生息数回復に向けた対策に取り組んでいる。

 調査は県や熊谷市、地元の「市ムサシトミヨをまもる会」などでつくる「ムサシトミヨ保全推進協議会」(会長=富岡清市長)がおおむね5年ごとに実施。県天然記念物となっている最上流の生息域約400メートルを含む約2キロを100メートルおきに区切り、網で水草の中をすくって個体数を数える。確認された個体数を一定の計算式に当てはめ、推定生息数をはじき出した。

 関係者によると、昨年2月の調査による推定生息数は2千匹台にとどまった。06年が1万5757匹、11年は2万2655匹と増えてきたのが一転、大きく減少した。

 11年までは調査結果は公表されてきたが、県と熊谷市は昨年2月のデータは公表していない。その理由について、県と市は、取材に「大きく減少したのが一過性の現象なのか、何らかの原因があってのことなのか、慎重に見極める必要があるため」と説明した。

 市やまもる会によると、減少の原因として、①コイやギンブナ、アメリカザリガニなどの天敵がムサシトミヨやその卵を捕食した、②ムサシトミヨが巣に用いたり、身を隠したりする水草が大きく減った――などが考えられるという。

 天敵では現在は駆除されているが、各地で在来水生生物への食害を及ぼしている特定外来生物コクチバスが13年秋に確認されている。14年には台風で最上流部から約1・6キロ下流にある木製の堰(せき)が破損し、コイなどがたくさん上ってきたとみられるという。

 市やまもる会は、県天然記念物水域に直径5センチ、長さ70センチ前後の塩ビ管を沈めて、中に入ったザリガニを駆除してきた。円筒形のわなで天敵の魚を捕らえたり、水草の芽を食べるカモよけのため水面近くに糸を張り巡らせたりする試みも行っている。

 市とまもる会は「生息数が早く回復するよう、保護の取り組みを強化したい」としている。(川崎卓哉)

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 〈ムサシトミヨ〉 トゲウオ科で体長3・5~6センチの1年魚。オスが水草で直径約3センチの巣を作り、メスが中に産卵する。県は熊谷市久下の市ムサシトミヨ保護センター内のポンプで地下水をくみ上げて元荒川に流しており、このきれいな水によって、世界で元荒川上流部だけが野生の生息地として残っている。環境省や県は、ごく近い将来に絶滅の危険性がきわめて高いとして、絶滅危惧ⅠA類に分類。熊谷市も「市の魚」に選定した。周辺の小中学3校などが増殖のために飼育を続け、市内の一部ではマンホールにイラストが描かれている。