【動画】二階堂ふみさんが語る「DAVID BOWIE is」=佐藤正人撮影
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 英国が生んだ異才のロックアーティスト、デビッド・ボウイ(1947~2016)の創作過程に迫ろうとする大回顧展「DAVID BOWIE is」(朝日新聞社など主催)が、東京・天王洲の寺田倉庫G1ビルで開催中だ。13日(日本時間)には第59回米グラミー賞が発表され、昨年1月発表の遺作「★(ブラックスター)」から同名曲が「最優秀ロック・ソング」に選ばれるなど5部門で受賞。亡き後も存在感を示し続けるボウイの展示会を見た。

 「モダンジャズは全く理解できなかったけど、好きになるまで聴き続けた」「難解過ぎる本をタイトルが人目に触れるようポケットに入れていた」。10代のコーナーで、当時を振り返るボウイの語りが、会場内で装着するヘッドホンから流れてきた。“スターになってみせる”という青い野望が充満している。

 展示は、各時代のスタイルをなぞる。グラムロックを先導した1970年代前半の伝説的ペルソナ「ジギー・スターダスト」や「アラジン・セイン」の時代、楽曲が芸術性を帯び、退廃的な美貌(びぼう)が暗く輝く70年代後半のベルリン3部作の時代、「レッツ・ダンス」(83年)の時代……。「変化の人」の面目躍如たる内容で、あたかも、奇と知と美のカオスにのみこまれるようだ。

 躍動するステージの映像、直筆の歌詞、絵画、スケッチ、衣装などに、ヘッドホンからの関連曲やボウイの語り声が重なる。すると展示物は、にわかに多義・立体的なメッセージを発してくる。

 ボウイを模したマネキンの製作は難しかったらしい。「ウエストが細く、筋肉質だった」(企画したビクトリア・アンド・アルバート博物館)からという。そのマネキンがまとう意匠を凝らした衣装の数々。記者はイタリア展も見たが、日本展は丁寧に配置している印象だ。

 展示会を通じて感じるのは「よくもまあ、これだけのものをとっておいたな」ということだろう。コカイン使用時の小スプーン、メイクを落とした時のティッシュまである。

 ボウイは、つかみ取ったアイデアに持続的執着をもったのではないか。作品「スペイス・オディティ」(69年)の裏ジャケットのための自筆スケッチは好例だ。描かれている、老婆をいたわって歩む道化の姿。このモチーフは楽曲「アッシュズ・トゥ・アッシュズ」(80年)のビデオで結実する。

 最後の「ショウ・モーメント」は、立ち去りがたい気分にさせる。イタリア展がコンサートホールの感覚だったのに対し、日本展はライブハウスの感覚。若き日の曲「スウィート・シング」「ジーン・ジニー」「ロックンロールの自殺者」の大映像が大音量を伴って流れる。野心と執着心を秘めたボウイの歌う姿は、あまりにもまばゆい。(米原範彦)

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 4月9日まで。3月は混雑する見込みで、2月の平日は待たずに入場できる可能性が高い(16日時点)。午前10~午後8時(金曜は午後9時)。入場は閉館1時間前まで。原則として月曜休館。当日券は一般2400円、中学・高校生1200円。最寄り駅は「天王洲アイル」駅。