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 イスラエルとの度重なる戦闘で荒廃したパレスチナ自治区ガザを復興したい――。そんな情熱を胸に会社を起こしたパレスチナ人の女性が国際女性デーの8日に来日する。女性は結婚して家庭に入るのが当然とされる社会で、日本の専門家らの支援を受けて、実現に向けて踏み出している。

 マジド・マシュハラウィさん(23)は、自宅で独自に開発した「安くて軽くて丈夫なブロック」を持ち上げた。大学で土木工学を学んでいた2015年に建築資材会社「Green Cake」を起業。高価なセメントを少なくして、ごみ同然の焼却灰を使ったブロックを発案、実験を1年繰り返して仕上げた。

 市民ら2200人以上が死亡した14年夏の戦闘で被害を受けた約14万戸のうち、再建できたのは半数ほど。イスラエルに境界を封鎖され、セメントなどの建築資材は軍事施設の建設などに使われるとして、搬入を厳しく制限されている。

 ガザの経済は荒廃し、失業率は4割を超える。女性は約6割、うち15~24歳では約8割と世界最悪のレベルだ。人口約190万人の約8割が支援に頼り、雇用創出が大きな課題となる中、起業が注目を集めている。

 だが、灰を求めて廃棄物処理場や食堂を回り、工場で試作に明け暮れるマシュハラウィさんに周囲の視線は冷たかった。ガザの女性の多くは20歳前後で結婚し、家庭に入る。「特に建設業で働く女性はいない。新しいものを受け入れない社会の壁にぶつかった」

 「私の人生は私のもの」と信じるマシュハラウィさんが勇気づけられた言葉がある。「信念を失わないで。やりがいを感じられる唯一の方法は、素晴らしい仕事と信じることをやること」(米アップル創業者の故スティーブ・ジョブズ氏)

 昨年8月、転機が訪れる。日本の若手社会人らでつくる有志団体「ジャパン・ガザ・イノベーション・チャレンジ」がガザの若者の起業を支援しようと、現地で開催したビジネスコンテスト(賞金総額1万ドル)で優勝。代表で会社員の上川路文哉さん(35)は「実現可能で、ガザの人々の生活向上に資すると考えた」。

 マシュハラウィさんの挑戦を紹介する動画は世界で1500万回再生され、日本での支援の輪も広がる。ガザでは設備不足だった素材の検査は、前田建設工業グループの「JM」(東京)の大竹弘孝社長(60)が「ガザの復興に取り組む若い女性を支援したい」と引き受けた。業界では一般に使わない、きめの粗い灰を原料にして価格や重量を大幅に下げたアイデアが高く評価された一方、強度面などで課題も見えた。

 今回は同団体などの招きで国際女性デーに合わせて来日し、建築資材の製造や品質管理の先端技術を学ぶほか、経営学修士(MBA)を取得した若手社会人の有志からビジネスを教わり、事業の本格的な始動につなげる。

 「日本の皆さんとの出会いが私の人生を変えた。ガザだけでなく日本や世界に役立つ商品を開発したい。将来の夢は、才能はあるのにチャンスがないガザの若者のために起業支援の学校をつくることです」

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 マシュハラウィさんは、コンテストで準優勝した同じガザのアマル・アブ・モエリックさん(25)ととともに9日に一橋大、10日に六本木アカデミーヒルズで4カ国の若手女性起業家の討論会に参加する。10日には参院議員会館で起業の取り組みを報告する。詳細はジャパン・ガザ・イノベーション・チャレンジのホームページ(https://gazachallenge.org/別ウインドウで開きます)で。(ガザ=渡辺丘)