「すぐにテストしろ」 悪魔追い払った672時間

有料会員記事

[PR]

ロータリーエンジンの半世紀 誕生編(11)

 平塚敏夫が手にしていたのは、カーボン製の新たなアペックスシール。テストは後で、と言うロータリーエンジン(RE)研究部員にこう言う。

 「待ちきれない。これだけはぜひ、すぐにテストしてもらいたい」

 気迫に押され、予定を変更してテストが始まった。毎分5千回転、時速135キロを出す想定で連日テスト用エンジンを回し続けた。

 エンジンの設計担当だった桐原正之(84)はテストの様子を逐一平塚のもとに報告した。アペックスシールがだめになれば、エンジン出力は下がる。だがデータは、快調に回り続けていることを示していた。

 1964年12月28日、仕事納めの月曜日にテストを終えることが決まった。

 「はい、ストップ」。停止したエンジンを分解し、油をきれいに流していく。エンジンが回ったのは計672時間。9万720キロを走った計算だ。

 一瞬の静寂。桐原らが見守る中、誰かの声が響く。

 「チャターマークが、ない……」

 忌々(いまいま)しい爪痕を…

この記事は有料会員記事です。残り617文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【無料会員限定】スタンダードコース(月額1,980円)が3カ月間月額100円!詳しくはこちら