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 2015年春、沖縄県沖縄市のちばなクリニックの禁煙外来を訪れ、禁煙を始めた高江洲孝代さん(46)と同級生の平仲佳子さん(46)は、7月の受診を最後に通院するのをやめた。

 処方された禁煙補助薬チャンピックスを飲まなくても、たばこを吸いたい欲求は起きなかった。8月、2人は禁煙したまま無事、45歳の誕生日を迎えた。当初の目標だった「誕生日までに禁煙成功」を成し遂げたかに見えた。

 だが、落とし穴が待っていた。

 翌月、高江洲さんは、次男が所属する野球チームの母親の飲み会に参加した。普段は飲まないワインを炭酸で割ると、おいしくて、数杯飲んでしまった。

 ほろ酔い気分で店を出ると、友人の母親が、細いメンソールのたばこを箱から取り出した。「吸うけどほしい?」と聞かれた。「いいの?」。手が伸びた。

 5月に禁煙して以来、4カ月ぶりに吸うたばこ。おいしいと思った。2本もらってその場で吸い、別れ際に家で吸いたいからと、さらに1本もらって帰った。翌朝、仕事に出かける前に吸った。

 「朝1本だけなら大丈夫」。自分に言い聞かせた。朝だけのつもりが昼にも吸い、翌日、コンビニエンスストアで1箱買った。

 たばこを再開してしまったことに高江洲さんは自己嫌悪に陥った。「たばこの縛りから逃れられないのか」と思うと絶望した。

 平仲さんも同じだった。

 9月、教会へ礼拝に出かけた日曜日、知人から1本もらって吸ってしまった。翌日、仕事中は我慢したが、終わると喫煙者の同僚のいる職場まで車を運転して出かけ、1本だけもらった。火をつけ、煙を肺いっぱい吸い込んだ。

 「箱だけは買うまい」。その気持ちは堅く、3週間ほどは同僚や知人から1本ずつもらう生活を続けていたが、結局、箱を買うようになった。

 晩酌の習慣も戻った。夜、たばこを吸いながらテレビを見ていると、むなしさがこみ上げてきた。もう大丈夫と思っていたのに、やめられたと思っていたのに、どうしてまた手を出してしまったのか。「私は一生、たばこの呪いから逃げられないのだろうか」

<アピタル:患者を生きる・依存症>

http://www.asahi.com/apital/special/ikiru/

(錦光山雅子)