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 東京メトロ子会社の契約社員ら4人が、正社員と同じ地下鉄売店での業務をしていたのに待遇に格差があるのは労働契約法に違反しているとして、同社に差額賃金など計約4560万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が23日、東京地裁であった。吉田徹裁判長は「正社員とは業務内容や責任の程度に大きな違いがある」として同法違反には当たらないと判断。差額賃金や慰謝料の請求を退けた。

 一方、時間外手当の割増率については、正社員と契約社員との間で差があるのは同法違反と認め、原告1人の差額分約4千円の支払いを同社に命じた。

 訴えていたのは、東京メトロの子会社「メトロコマース」(東京都)の契約社員だった60代の女性4人。地下鉄の売店での接客や商品発注などの仕事内容、責任が正社員と同じなのに、基本給や賞与が少なく退職金も出ないのは、不合理な待遇差を禁じた同法に違反すると主張していた。

 判決は、正社員は契約社員とは異なり、各店を統括する立場になったり配置や職種の転換などを命じられたりしていると指摘。「給与などに格差があるのは不合理な労働条件の違いとはいえない」とした。

 原告の後呂良子さん(62)は「きょうの判決は何一つ納得できるものはありません」、原告側代理人の滝沢香弁護士は「国が賃金格差の是正を議論するなか、流れに逆行する極めて不当な判決だ」と述べ、控訴する意向を示した。

 メトロコマースは「判決内容を精査し、今後の対応を協議していきたい」とコメントした。(塩入彩)

原告代理人「政府の方針にも反する」

 「『同一労働同一賃金』を進めている政府の方針にも反する内容だ」。原告代理人の青龍(せいりゅう)美和子弁護士は、判決をこう批判した。

 原告が裁判の根拠にした労働契約法20条は、「同一労働同一賃金」の柱の一つ。契約社員など有期契約労働者と正社員の待遇格差が不合理であってはならないと定めている。定年後再雇用で待遇が下がった例や、トラック運転手の手当に差がある例で、20条違反を認めた判決がある。

 政府は昨年12月、どのような場合の待遇格差が不合理になるかを示した「同一労働同一賃金」のガイドライン案を示したばかり。案には「将来の役割や期待が違う」という理由だけでは不十分なことが明記され、基本給や賞与についての考え方も盛り込まれている。

 23日の東京地裁判決は、「正社員の大半の業務は売店に限られていない」として、原告と正社員全体を比較。その上で、正社員が長期雇用を前提にしていることを理由に、ほとんどの請求を退けた。

 水町勇一郎・東京大学教授(労働法)は、「『有為な人材を確保するため』という会社の抽象的・主観的な説明だけを理由にしていて、実態に基づいてきちんと判断していない」と指摘する。(編集委員・沢路毅彦)