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(25日、選抜高校野球 大阪桐蔭11―0宇部鴻城)

 瀬戸内の故郷のため、遠くから来てくれた父のため、精いっぱいのプレーを見せたい。大阪桐蔭の山本ダンテ武蔵君(3年)は、25日の第1試合の宇部鴻城戦に4番で出場。アルプスからの応援を背に躍動した。

 日本人の母とアメリカ人の父をもつ。広島県江田島市出身。沖合にはカキ養殖用のいかだが浮かび、漁船が行き来する。カキ打ち作業が行われる小屋を通って小学校に通った。

 小学1年のとき、ソフトボールを始めた。練習相手は祖父でカキ養殖などを営む邦俊さん(60)。邦俊さんは広陵(広島)で捕手だった元球児。漁帰りの邦俊さんと、夕飯までキャッチボールをするのが日課だった。

 甲子園を目指し、親元を離れて大阪桐蔭に進学した。その夏の甲子園では、関東一(東京)の3年だったプロ野球楽天のオコエ瑠偉選手(19)の活躍に注目が集まった。

 山本君も見た目から、練習試合や遠征先の対戦相手に「あいつ外人ちゃうんか」と言われることが増えた。だが、そんなことはお構いなし。ひそひそ話が聞こえると「力を見せつけたる」と燃える。その夏、帽子のつばの裏には「オコエ超え」と書いた。

 「武蔵」君と呼ばれるよりも、「ダンテ」君と呼ばれることの方が多い。名付けてくれたのは父親のチャールズ・メイソンさん(40)。母江利子さん(39)とは山本君が1歳の頃に離婚したため、物心がついてから3回しか会っていない。ただ、両親の関係は良好で、山本君は江利子さんを通じた電話やメールでチャールズさんとのやりとりを続けていた。

 3回のうち1回は昨年。大阪桐蔭のグラウンドに来てくれた。山本君は英語が苦手。「多分『しんどいこともあるけど、しっかりやれよ』と言ってくれたはず」と振り返る。

 この日は4回目の再会だ。山本君の甲子園出場を聞きつけて、米カリフォルニア州から約11時間かけて駆けつけた。「TOIN」とロゴの入った上着で、江利子さん、邦俊さん、バス2台で訪れた江田島の漁業関係者ら総勢90人の応援団と声援を送った。

 チームは11―0で勝利。山本君も四回に右翼前への安打を放ち、盗塁も成功させた。「みんなの応援をスタンドから感じた。ヒットは1本だが、盗塁は見てもらえた」。チャールズさんは「冷静に盗塁していた。守備も手堅くできたので満点以上の120点。日本中の人にダンテがどんなにすばらしい選手なのか知ってもらいたい」と褒めた。(半田尚子)