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 核兵器を法的に禁止する「核兵器禁止条約」の制定を目指す初の交渉会議が27日午前(日本時間同日夜)、ニューヨークの国連本部で始まった。「核なき世界」の理想に向け、メキシコなど非核保有国を中心に110カ国以上が賛同するが、「核能力の強化」を訴えるトランプ米政権や他の核保有国は交渉を拒否。唯一の戦争被爆国である日本も反対の立場だ。実効性のある条約が出来るかと同時に、今後の「核なき世界」の行方をも占うせめぎ合いが始まる。

 核兵器禁止条約は、メキシコやオーストリアなど非保有国が主導。核兵器を「非人道的」なものとし、使用や保有を法的に禁じる内容だ。廃棄期限や他国の領土への持ち込み禁止などを盛り込むことを目指している。

 1970年に発効した「核不拡散条約」(NPT)は、米ロ英仏中の5カ国に核兵器保有を認める一方、「誠実に核軍縮交渉を行う」義務を課している。しかし、核軍縮がきちんと進んでいないことの不満が、非保有国やNGOを中心に今回の条約制定の動きにつながった経緯がある。

 これに対し、米国など核保有国は、法的な禁止には激しく反発する。

 トランプ氏は2月のインタビューで「他国が核兵器を保有していくなら、我々はトップになる」と発言。オバマ前政権が進めた核軍縮政策であるロシアとの新戦略兵器削減条約(新START)についても「悪い取引」と批判した。オバマ前政権の「核なき世界」から、核軍縮を大きく後退させる可能性がある。米国のヘイリー国連大使は27日、交渉が始まった国連総会議場の前で、英仏や韓国の代表者ら約20人とともに会見し、「現実的にならないといけない。北朝鮮が核兵器禁止条約に賛成するのか? 我々の仕事は自国民を守ることだ」と核抑止の必要性を強調し、条約交渉に参加しない意向を明かした。

 ロシアも「核抑止力が現在の世界の戦略的安定を確かなものにしている」(ロシア外務省高官)などと安全保障面の効用を強調し、法的禁止は「時期尚早」と訴えている。

 日本は、豪州や韓国などとともに米国の「核の傘」に依存することから条約交渉に反対の立場だ。27日の協議には出席し、高見沢将林軍縮大使が日本政府の反対の意見表明を行う予定。しかし、協議の冒頭では、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)事務局次長の藤森俊希さん(72)が被爆者を代表して、「ふたたび被爆者をつくらない」などと条約推進の意見を訴えており、日本政府は苦しい状況だ。

 交渉は2段階になっており、31日までの前半では、核兵器の使用や保有、開発、配備など具体的な禁止事項などについて議論する。これを踏まえ、5月ごろに最初の条約案を提示し、6月15日から7月7日までの後半の交渉で条約を作り上げる見通し。(ニューヨーク=松尾一郎、金成隆一)