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 和歌山市園部(そのべ)で1998年7月、夏祭りのカレーに猛毒のヒ素(亜ヒ酸)が混入され、4人が死亡、63人が中毒になった事件で、和歌山地裁(浅見健次郎裁判長)は29日、林真須美(ますみ)死刑囚(55)の再審請求を退ける決定を出した。弁護団は決定を不服として、大阪高裁に即時抗告する方針。

 弁護団によると、この日午後3時すぎに地裁から電話で、請求を棄却したと連絡があった。4月3日に記者会見を開くという。

 2009年から続く再審請求審で弁護団は、X線分析が専門の河合潤(じゅん)・京都大学大学院工学研究科教授の鑑定をもとに、林死刑囚の自宅などから押収されたヒ素と、事件現場のゴミ袋にあった紙コップ内のヒ素、カレー内のヒ素は同一のものとは言えないと主張。放射光施設「スプリング8(エイト)」(兵庫県佐用町)などを使った当時の鑑定に「『同一』と見せるための不正があった」と訴えていた。また林死刑囚がカレーを調理したガレージでの見張り中、「カレー鍋のふたを開ける不審な行動をした」という住民の目撃証言も次女と見誤った可能性があり、信用できないとしていた。

 一方、地裁は弁護団が求めたヒ素鑑定に関するデータの開示や再鑑定、河合教授の証人尋問などを実施しなかった。当時、急性ヒ素中毒になった60代の女性は取材に「捜査と審理は十分に尽くされた。棄却は当然の判断と思う」と話した。(真田嶺、白木琢歩)

事件起きた地区、当時の面影なく

 1998年7月に事件が起きた園部地区の夏祭り会場には住宅が建ち、当時の面影はまったくない。

 近くにあった林死刑囚の自宅は2000年、放火で全焼した。土地は競売にかけられ、04年に地元自治会が落札。ベンチや花壇を整備するなど公園として整備された。今でも自治会が年2回草むしりをしているが、訪れる人は少ない。

 かつて近くの公園で行われていた慰霊祭も、09年が最後となった。事件で急性ヒ素中毒になった男性はこう話す。「当時を知らない新しい住民が増えてきている。被害者が事件を忘れることはないが、できればそっとしておいてほしい」

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 〈和歌山カレー毒物混入事件〉 1998年7月25日、和歌山市園部の民家のガレージで調理されたカレーの鍋に、猛毒のヒ素(亜ヒ酸)が混入された。園部第14自治会の夏祭りに提供され、カレーを食べた自治会長(当時64)、同副会長(同53)の2男性と高校1年の女子生徒(同16)、小学4年の男児(同10)の計4人が死亡。未成年者30人を含む住民ら63人が急性ヒ素中毒になった。