[PR]

 長崎市で江戸時代から続く料亭「富貴楼(ふうきろう)」が、6月10日で休業する。伊藤博文が名付けた老舗で、建物は国登録有形文化財。後継者がいないことや従業員の人手不足が原因で、再開のめどは立っていないという。

 富貴楼の前身は1655年ごろには営業していた料亭で、1887年に初代内田トミさんが親戚から引き継いだ。初代総理大臣を務めた伊藤博文が89年に訪れ、トミさんの名前などから「富貴楼」と名付けた。1969年の長崎国体の時には、当時の皇太子ご夫妻(現在の天皇皇后両陛下)に昼食を出前した。長崎伝統の卓袱(しっぽく)料理が有名で、市民の間でも祝いの席などで親しまれていた。

 6代目の内田一さん(69)によると、後継ぎがいないことに加え、従業員の高齢化や人手不足から、続けていくのが難しいと判断したという。売り上げはバブル期の10分の1に落ち込み、庭や建物の維持費もかかり、「個人経営で続けるには困難になった」という。

 廃業も考えたが、「やめないで下さいという人の思いを無にするわけにはいかない」と休業することにし、県外の企業を含めて買い取り先を探している。

 建物は2007年に国の有形文化財に登録された。県学芸文化課は「料亭建築の特徴をよく示した建物。譲ることになっても、文化財としての価値を残すようお願いするつもり」としている。(田部愛)