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 運動部活動の事故で我が子を亡くした遺族たちが、子どもたちを重大事故から守るために立ち上げた「エンジェルズアーチ」という任意団体がある。その学習会が22日、「スポーツ中の熱中症」をテーマに日体大で行われた。

 具体的な事例として挙げられた一つが、2013年8月14日、水泳の練習で亡くなった国本考太さん(当時24)の事故だった。

 知的障害・発達障害のある考太さんは給食会社で働く傍ら、障害者専門の水泳教室に通い、ジャパンパラリンピックに7回出場していた。

 両親が見守る中、東大阪市の室内プールでの練習は午後6時に始まった。空調はなく、サウナのようだった。母の洋子さんは何げなく水に触り、「ぬるい!」と言ったのを覚えている。

 クロール100メートルを10本、バタフライ100メートルを7、8本泳いだところでコーチからフォーム修正の指示が出た。考太さんはプールから上がり、鏡を見ながら約5分間、シャドーストロークをした。

 ここで初めて水分補給をし、水中に。指示されていたバタフライではなく、クロールで泳ぎ出した。100メートル泳いでもやめない。異常行動だ。仲間が足をつかんで止めたが、手はかき続けていた。

 引き上げられると、けいれんが始まった。午後6時55分に救急搬送。病院で亡くなった。体温は41・9度あった。

 死体検案書には、熱中症にかかり、重いてんかんの発作を引き起こしたことが死因と書かれた。

 一見意外かもしれないが、プールでも熱中症は起こる。

 14年7月には、京都市の中学の水泳部員13人が救急搬送された。同年8月にも、東京都の中高の水泳部の合同練習で15人が病院に運ばれた。

 勉強会では、早大の永島計教授(生理学)が「水温が高いと、水中で熱の逃げる場所がないので体温が上がる」と解説した。

 日本水泳連盟の指導教本では、水温と室温を足して60度前後が水泳に最適で、65度以上は「不適」とされる。考太さんの事故当日の午後6時の水温は32・7度、室温は36・0度で、計68・7度だった。

 まもなく、熱中症が頻発する時期がやってくる。永島教授は「今は夜も暑いのでプールの水温が下がりにくく、リスクは増えている」と警鐘を鳴らしている。(編集委員・中小路徹

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