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 松阪牛の産地、三重県の畜産ベンチャーが、乳牛の母体を借りた代理出産での繁殖に北海道で乗り出す。三重の地銀、百五銀行が28日、出資を発表した。年老いた農家が繁殖をやめたのを一因に、もとになる子牛が全国的に減り、松阪牛などの和牛は高騰している。効率的な繁殖が軌道に乗れば、価格の安定につながりそうだ。

 和牛は生まれた場所に関係なく、一定期間育った地域のブランドを名乗れる。松阪牛は三重県松阪市周辺で肥育を担う農家が、兵庫や東北、九州など各地で子牛の繁殖を担っている農家から、黒毛和種のメスの子牛を買い、育てたものだ。

 ところが、その黒毛和種の子牛が減った。2016年の市場取引の頭数は09年より2割少ない31万頭だった(農畜産業振興機構調べ)。繁殖農家が高齢になってやめたのに加え、口蹄疫(こうていえき)や東日本大震災も響いた。子牛1頭の取引価格はこの間、2倍以上の80万円台まで値上がりした。

 そこで三重の畜産ベンチャーは、主に乳牛として飼われているホルスタインの母体を借りて、効率的な代理出産による繁殖に乗り出す。

 負担の大きい妊娠と出産はホルスタインのメスに任せる。肉質がよくなる遺伝子を持つ和牛のメスとオスは貴重であり高価なため、卵子と精子の供給に専念させる。

 最も一般的な繁殖の方法は、母牛の体内への人工授精だ。代理出産も導入されつつあるが、卵子を供給するメスにホルモン剤で排卵を促すのが一般的。今回は、エコーを利用することで体に負担をかけずに卵子を継続的に取り出し、受精卵の生産効率を2・5倍に上げる考えだ。月あたり1万個をめざす。

 いい受精卵を手ごろな価格で繁殖農家に売り、子牛を増やす。これを松阪牛などに育ててもらう計画だ。

 三重の畜産ベンチャーは代理出産での繁殖に乗り出すため、酪農が盛んな北海道帯広市に「AGエンブリオサポート」をすでに設立。帯広畜産大の大学院を出た技術者も参加している。百五銀やみずほ銀行などでつくるファンドが28日、5千万円を出資した。

 子牛の高騰を背景に、和牛肉の価格は過去最高の水準にある。農畜産業振興機構によると、和牛の肩肉の今年3月の小売価格は100グラムあたり789円で、3年間で2割上がった。松阪牛は、その中でも高値で売られている。(細見るい、高木文子、山村哲史)

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 〈和牛〉 生まれも育ちも日本で「黒毛和種」「褐(あか)毛和種」「日本短角種」「無角和種」の4品種と、これらの間で交配させた交雑種などを指す。農水省によると2015年度の牛肉全体の国内供給量のうち、和牛は18・4%。ホルスタインや、ホルスタインと黒毛和種を交配させたもので日本育ちの牛は「国産牛」と呼び、和牛とは区別する。