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 日本国憲法は3日、施行から70年を迎えた。改正に前向きな勢力が衆参両院の3分の2以上を占めるなか、首相が改憲に踏み込んだメッセージを発表。改憲案への賛否を問う国民投票も現実味を帯びる。各地で先がけて行われてきた住民投票は、意思決定の手法として定着する一方、課題も浮かぶ。「民意」とは何なのか、改めて問われている。

 漆器や朝市で知られる石川県輪島市。産業廃棄物処分場の建設計画をめぐって2月、住民投票が行われた。北陸3県などから計345万立方メートルの廃棄物を受け入れる計画に、住民の賛否は二分していた。

 だが、開票作業は行われなかった。投票率は42・02%。50%以下だと「不成立」になる定めがあった。

 「投票に行かないことも一つの選択肢」。昨年12月の市議会で、梶文秋市長がそう答弁。市議会の自民系最大会派も「投票に行かないことで、『賛成の民意』を示して」と書いたチラシで棄権を呼びかけていた。

 建設に反対する市民団体代表の板谷外良(そとよし)さん(75)は「投票に行くだけで反対派と見られ、投票の自由を妨害された」と感じた。棄権を呼びかけたある市議は「選挙戦術のようなもの。住民投票自体を否定したわけではない」と言う。

 日本最西端の与那国島(沖縄県与那国町)では、2015年2月に陸上自衛隊の部隊配備の賛否を問う住民投票があった。

 両派の支援者たちが島外から押し寄せ、米軍基地に反対する団体や保守系団体のメンバーらが、それぞれのビラを各戸に配った。スーツ姿の政府職員が賛成派町議と一緒に、戸別訪問する姿も見られた。

 投票の結果、賛成が反対を上回り、駐屯地が昨年3月に開設された。誘致を主導してきた外間守吉町長(67)は「結果にほっとした」としつつ、「政策論争がなく、住民同士の好き嫌いが投票を左右した」。

 反対派で飲食店を営む猪股哲さん(40)は、勝ち負けよりも住民の議論不足を悔やむ。公開討論会を呼びかけたが、町役場の協力は得られず、身内からも「何で賛成派の味方まで呼ぶんだ」と異論が出た。「議論がなかったから合意形成もない。だから両者は今もすれ違ったままなんです」

 人口約6万7千人の埼玉県北本市では、地元の「悲願」だったはずの新駅構想が住民投票で立ち消えになった。

 市議会は約30年前、新駅設置を求める請願を採択。04年には「期成会」を結成し、JRへの働きかけを強めた。熱意に押されたJRは13年7月、正式協議に応じる構えを見せた。

 だが、当時市長として旗を振った石津賢治さん(52)は不安だった。「本当に住民は必要としているのか」。財政負担を危ぶむ声もあり、13年末、住民投票で賛否を問うた。

 結果は賛成8353票、反対2万6804票。新駅構想は白紙撤回に追い込まれた。2年後の市長選で石津さんは、「反対」を掲げる候補に敗れた。

 昨年、英国が国民投票でEU離脱を決めたニュースに新駅構想を重ねた。長年の議論を一発でひっくり返す「民意」のうねり。「私は今でも新駅が必要だと思っている。でも、住民の選択が正しいということなんだろう」。石津さんは今も整理できないでいる。

■あえて実行しなかった…

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