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老いる巨龍――事件で見る中国の少子高齢化:6(マンスリーコラム)

 私が初めて中国を訪れたのは1980年代末。大学生だった私は神戸から「鑑真号」というフェリーに乗り、2泊3日で上海に到着した。

 当時の上海は、まだ古い街並みが多く残っていた。通りには、租界時代に建てられた西洋式高層建築が立ち並ぶ。その間の脇道を少し入ると、里弄(リーロン)と呼ばれる昔ながらのレンガ造りの共同住宅が続いていた。里弄の狭い路地には鉢植えや洗濯物が並び、道ばたで将棋を指す老人たちの傍らを子どもたちが駆け抜けていく。

 バッグパックを背負って里弄の間に迷い込んだ私は、片言の中国語でおじいさんに道を尋ねた。おじいさんは手に木製の鳥かごをぶら下げ、悠然と歩いている。いつの間にか、愛鳥の声を競わせる同好のお年寄りたちに取り囲まれ、聞いていないことまで丁寧に教えてもらった。

 そんな上海の里弄や、北京なら「胡同(フートン)」と呼ばれる路地の古い街並みは、その後の経済成長や北京五輪、上海万博にともなう再開発で急速に消え、マンションやオフィスビルに変わっていった。

 住民たちの濃い人情に彩られていた里弄や胡同の消失は、今回の連載で見てきた、かつて高齢者を厚く包んでいた家族やコミュニティーの絆が薄くなったことと、私には重なって見える。

レストランを追い出されて

 高齢者たちの居場所はいま、どうなっているのだろうか。気になる記事を中国紙で見つけた。

 スウェーデン発祥で世界最大手の家具販売、イケアが上海市中心部の徐匯区に開いている店舗。店内のフードコート形式のレストランでは、多くの高齢者が飲み物や食べ物を持参して集まり、座席を長時間占有する。店側はこれを問題視した。

 もともとは数年前、中高年の男女のお見合いを紹介する団体が参加を呼びかけたことがきっかけだったが、やがて異性に限らず話し相手を求める一人暮らしの高齢者たちが訪れるようになり、500人もの人が集う茶飲み話の社交場になったという。

 店側は昨年10月、レストラン…

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