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 「二刀流」で夏冬両五輪出場を目指す女子選手がいる。ボブスレー日本代表の君嶋愛梨沙(きみしまありさ)(21)。日体大陸上部に所属するスプリンターは昨季からボブスレーを始め、わずか4カ月で世界選手権女子2人乗りで7位となった。来年の平昌(ピョンチャン)五輪でも世界を驚かせるかも知れない。

 「正直、二刀流は大変。この春はボブスレーが終わったら長い休みもなく陸上に戻った」。君嶋は5月もボブスレーの代表合宿に参加し、陸上では同月26日にあった関東学生対校選手権の女子100メートルで自己最高の11秒73で優勝した。

 山口県岩国市育ち。米国人の父と日本人の母を持ち、中学から陸上一筋だった。中学2年のとき、全国大会200メートルで当時の日本新記録を出して優勝し、将来を期待された。だが、埼玉栄高で左足甲をけがしてからは伸び悩んだ。

 ボブスレーを勧められたのは昨夏、日体大での選手発掘テストだった。陸上の記録が戻りつつあった矢先で、心は揺れた。そりを後ろから押すブレーカーに選ばれたが、何度も断った。

 この競技の女子選手は世界でも少ない。そこに目をつけた日本連盟は平昌五輪に向け、女子の強化に特化。昨季は本場ドイツからヘッドコーチを招き、他競技からの転向者を探した。

 君嶋は167センチと長身で、30メートル走は3秒46と日本ではずば抜けている。大石博暁ボブスレー強化部長は「パワーとスプリント力を兼ね備えた日本の女子選手はこれまでいなかった」と期待をかける。君嶋も「自分の力が求められる場所は多くない」と、陸上に軸足を置きながらも前向きになれた。

 昨年11月、そりの乗り方を体中をあざだらけにしながら覚え、1カ月後にはワールドカップ下部大会で優勝。押切麻李亜(まりあ)(ぷらう)と組んだ2月の世界選手権では日本勢過去最高の7位となった。平昌五輪の日本代表は来年1月以降に決まる。君嶋は「そりの性能、ランナー(刃)、スタートダッシュがうまくかみ合えば、五輪でも結果を残せる」と意気込む。

 冬の間はそりを押し続け、陸上に向けた練習はできなかった。だが、5月6日にあった競技会の100メートルでは、中学3年時の2010年に出した自己最高を0秒01上回る11秒89を記録し、続く関東学生対校選手権でも自己新を塗り替えた。「スタートが良くなる相乗効果。夏冬で五輪をめざしたい」と、二刀流への手応えを感じている。(笠井正基)