[PR]

幸せな老いを探して 米国留学で見たこと:6

 米国には、日本のような公的介護保険がない。家族はどのように高齢者や認知症の人を介護しているのだろうか。

 カリフォルニアワインの産地として知られる米国西海岸のソノマ。街の中心部に近い一軒家で、ウィリー・ノォップさん(83)はアルツハイマー型認知症の妻グレッタさん(83)と暮らしている。いわゆる「老老介護」だ。

 私がウィリーさんと出会ったのは、サンフランシスコのNPO「家族介護者同盟」が開いた介護者向けの勉強会だった。家族介護者同盟は電話相談や勉強会を通じ、家族を介護する人を30年以上サポートしている。勉強会は無料で、介護者に有益な情報や知識を「家族コンサルタント」と呼ばれる専門職が提供する。

 会が終わってウィリーさんに声をかけると、「もう行かなきゃならない」と言われ、名刺を渡すことしかできなかった。

 後日、ウィリーさんからメールが届き、ウィリーさん宅を訪ねた。グレッタさんが作った、2人の人生を刻んだタペストリーが書斎に飾られていた。1933年に誕生、結婚50周年、孫が生まれた年……。文字と絵が丁寧に刺繡(ししゅう)されていた。

 「室内や庭にあるアート作品のほとんどは妻が作ったものだよ」と、ウィリーさんは教えてくれた。

 デンマークで生まれた夫妻は米国に移住。ウィリーさんは、若い頃はエンジニアや、人生設計の本などを出版する仕事をしていた。家族でキャンピングカーに3年暮らしたこともある。リタイアしてからは、水彩画を書くために各地を訪れた。

 96年のメキシコから2006年4月の日本まで、夫妻は毎年10カ所以上を旅して、水彩画で風景を描いていた。昨年ダイヤモンド婚を迎えた夫妻の生活が変わったのは08年。グレッタさんが認知症と診断されたためだ。

 ガスコンロを点火した状態でその場を離れるなど、「24時間、目を離せなくなった」とウィリーさんはいう。

 コンロをガスから電気に変えた。グレッタさんは寝ていることが多いが、目が覚めたときに近くに誰もいないと混乱するため、誰かが必ずそばにいるようにと医師に言われた。近所への買い物は駆け足で出かけ、遠くに行くときは、長女のウラさん(56)に来てもらうようにした。

 周囲の人は、グレッタさんの病気と関わりたくないかのように、どんどん疎遠になっていった。全く顔を見せなくなった娘もいる。古い友人は他界した。会話が難しくなったグレッタさんと家に2人きりでいることが増えた。

 「誰とも不安や孤独を共有できない。孤独だった」

 夫妻には、ソーシャルセキュリ…

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

980円で月300本まで有料記事を読めるお得なシンプルコースのお申し込みはこちら