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 「悪役」として語り継がれる戦国武将、松永久秀の逸話は後世の作り話だったとする「松永久秀―歪(ゆが)められた戦国の“梟雄(きょうゆう)”の実像―」が歴史ファンの注目を集めている。日本中世史の研究者、天理大准教授の天野忠幸さん(41)が編者となり、出版された。

 松永久秀は多聞山城(奈良市)や信貴山城(平群町)を拠点に活躍した武将だ。天野さんは永正5(1508)年生まれ、天正5(1577)年没としており、下克上の風潮を代表する人物とされ、将軍の殺害や東大寺大仏殿を焼いたことなどの逸話で知られる。

 同書は、将軍を討ったのは息子の久通などで、久秀ではなかったと指摘。東大寺大仏殿の炎上は、三好三人衆が境内に陣取って戦場になったのが原因で、後に久秀が大仏の再興に尽力した点を同時代の古文書で裏付けられるとしている。織田信長に攻められ、信貴山城で茶釜「平蜘蛛(ひらぐも)」を抱いて死んだという逸話も、「第2次世界大戦後に生まれた俗説」としている。

 同書では天野さんを含む17人の研究者が、久秀の出自や三好氏の下で頭角を現した経緯を紹介。織田信長や足利将軍家との関係、戦国時代以降の城に影響を与えたとされる多聞山城などに関する論考も収録した。

 天野さんは「ドラマやゲームでも久秀は悪役として登場しますが、史料からは家族思いで、三好家に忠義を尽くす姿が浮かんできます」と話す。宮帯出版社刊。全376ページ、本体3500円。問い合わせは同社(075・441・7747)。(菅原雄太)