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 「性犯罪の被害を受けたのに、相手が不起訴処分になった」として検察審査会に不服の申し立てをしたフリージャーナリストの女性が素顔と名前を明かして異例の記者会見をし、再捜査を求めたうえで、性犯罪の法律や捜査について問題提起をした。刑法厳罰化法案について議論した衆院本会議で2日、この問題が取り上げられた。

 「捜査のシステムを変えてほしい」。フリージャーナリストの詩織さん(28)=姓は非公表=は5月29日、検察審査会に不起訴処分を不服とする申し立てをした後、東京都内で記者会見をした。性犯罪被害を訴えるために顔を出すことに抵抗があったが、「今話さないと変わらない」と思ったという。

 詩織さんは、当時TBSの記者だったフリージャーナリスト山口敬之氏(51)と2015年4月3日に会食。同日深夜から4日早朝にかけて飲酒後の意識がなく、その間に性交渉をされた、と訴えている。

 詩織さんは、数時間後に婦人科で避妊薬をもらい、NPOにも電話で相談したというが、いずれも真摯(しんし)な対応をしてもらえない、と感じたという。知人に話し、5日後の4月9日、警視庁に初めて相談。高輪署員は詩織さんに同行して現場のホテルの入り口にある防犯カメラの映像を確認したうえで、同月末に準強姦容疑で告訴状を受理した。山口氏は8月に書類送検されたが、東京地検が翌年7月、嫌疑不十分で不起訴処分とした。

 詩織さんは会見で「なかなか被害届を受理してもらえなかったり、捜査の過程で警察官が『逮捕状が出た』と説明したのに、逮捕が見送りになったり、納得できないことが多かった」と振り返った。30日には朝日新聞に「恥ずかしい、経歴に傷がつく、家族に迷惑がかかる。そうタブー視されている現状を変えたい」と話した。

 会見が報道されると、SNSなどで「勇気ある告発だ」との声があがる一方、「被害は自己責任だ」といった中傷を受けた。詩織さんは疲労と心労でここ数日、体調を崩しているという。

 詩織さんの申し立ては今後、市民から選ばれた検察審査会が不起訴処分が妥当だったかを審査。不起訴不当か起訴相当が議決されれば、捜査機関が再捜査することになる。

不起訴の男性「法に触れる事、一切していない」

 不起訴となった山口敬之氏は、安倍晋三首相ら政権幹部への直接取材をもとに政権の内幕を描いた「総理」などの著書があり、テレビにも多数出演していたフリージャーナリスト。当時はTBS勤務で、同社では政治部記者やワシントン支局長などを務めた。

 TBSは武田信二社長が5月31日の定例記者会見で「当時警察から問い合わせはあったが、詳細は語らずに退職したため詳細は承知していない。事実が明らかになることを期待したい」と述べた。

 山口氏は朝日新聞の取材に対し、メールで以下のように回答した。

     ◇

 私は法に触れる事を一切していません。ですから警察・検察の一年以上にわたる調査の結果不起訴となりました。よって私は容疑者でも被疑者でもありません。

 他方、不起訴処分の当事者には不服申し立ての機会が与えられていますから、申立が行われたのであれば、これについても私は今まで通り誠心誠意対応します。

 社会制度上の判断を尊重するため、本件の内容に関する個別の質問にはお答えしていません。

 また、当該女性が会見などで強調している論点は全て、警察・検察の調査段階で慎重に検討され、その結果不起訴処分が出ました。

 係争中の案件について片方の主張を一方的に取り上げ、容疑者でも被疑者でもない私を犯罪者扱いするような報道に対しては、しっかりとした措置をとる所存です。

国家公安委員長「必要な捜査を遂げた」

 2日の衆院本会議。

 民進党の井出庸生議員は週刊誌が「逮捕状が出たものの逮捕に至らなかったことについて、警視庁の当時の刑事部長が『自分が判断した』などと取材に答えた」と報道したことを取り上げ、通常と違う態勢がとられていたのか、などと質問。松本純・国家公安委員長は「警察署の捜査に関して警察本部が適正捜査の観点から指導を行うのは通常のこと。おたずねの事件に関しては、警視庁が告訴を受理し、法と証拠に基づき、必要な捜査を遂げた」と答弁した。

 共産党の池内沙織議員もこの問題を質問。金田勝年法相は「性犯罪は特に被害が潜在化しやすい犯罪である」としつつも、「一般論として、検察は事件の処理に際し、法と証拠に基づいて適切に対処している」と述べた。