[PR]

 脳性まひのため、寝たきりのベッドで詩を書き続けている女性の詩集が6月、発売された。タイトルは「いきていてこそ」。手足がほとんど動かず、言葉は話せない。「このしをよんでくれたすべての人たちに いきることのいみ みたいなものが つたえられたらうれしい」。声なき詩人はこう思っている。

 東京都板橋区の堀江菜穂子さん(22)。わずかに動かせる手で、特別支援学校の中学部時代に筆談の練習をスタート。ボランティアの助けを借りて、高等部時代からノートに詩を書きためてきた。周囲の人たちから何も考えていないと思われていると感じていた。そんな堀江さんにとって、詩は「心をかいほうするためのしゅだん」という。これまでで計約2千作品になる。

 2年前、堀江さんの詩を紹介する記事が朝日新聞に掲載され、詩集を望む声が寄せられていたという。

 「いきていてこそ」は全54編。命の尊さを訴える詩のほか、言葉遊びのようなリズミカルな作品もある。

 詩人の谷川俊太郎さんは「菜穂子さんが書いたものは、詩なのに詩を超えて、生と言葉の深い結びつきに迫っている」と、詩集の感想を寄せている。

 取材に対し堀江さんは、「わたしのこのいのちがだれかの心をあったかくできたらうれしい」と筆談で答えている。

 サンマーク出版、本体1200円。(北村有樹子)

     ◇

<せかいのなかで>

このひろいせかいのなかで

わたしはたったひとり

たくさんの人のなかで

わたしとおなじ人げんは

ひとりもいない

わたしはわたしだけ

それがどんなに ふじゆうだとしても

わたしのかわりは だれもいないのだから

わたしはわたしのじんせいを

どうどうといきる

     ◇

<いきていてこそ>

いまつらいのも

わたしがいきているしょうこだ

いきているから つらさがわかる

しんでいったともだちは

もうにどと

ともにつらさをあじわえない

いまのつらさもかんどうも

すべてはいきていてこそ

どんなにつらいげんじつでも はりついていきる

     ◇

<いけないことをしてみたい>

わたしは

いままでのじんせいでいちども

じぶんのいしで

いけないことをしたことがない

つみのいしきにさいなまれる

けいけんがしてみたい

いけないことをいけないと

わかってやるとは

どういうことだろうか?

してみたいけど かなわない

しかたがない

     ◇

<たくさんのビスケット>

たくさんあるから はんぶんあげるね

はんぶんになっても まだたくさん

まだあるから はんぶんあげるね

すこしへったけど まだあるから

そのまたはんぶんあげるね

とうとうあとひとつになってしまったけど

それでもはんぶんにわってあげるね

つぎにきたこには もうわけてあげられないから

のこったはんぶんの ビスケットをあげるね

ぜんぶあげちゃったけれど

ビスケットとおなじかずの

やさしさがのこっているよ