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 陸上の第101回日本選手権は23日、8月のロンドン世界選手権の代表選考会を兼ねて大阪・ヤンマースタジアム長居で開幕する。男子100メートルには、すでに世界選手権の参加標準記録10秒12をクリアした5人中4人が参戦。過去にない激戦だ。自己記録が10秒01の桐生祥秀(よしひで)(21)=東洋大4年=でさえロンドン行きの3枚の切符を逃す可能性がある“仁義なき戦い”の先に、9秒台突入はなるか。

 今季はまず3月、オーストラリアで桐生が10秒04、山県亮太(25)=セイコー=が10秒06で走った。そして今月4日の布勢スプリント(鳥取)で飯塚翔太(25)=ミズノ=が10秒08、ケンブリッジ飛鳥(24)=ナイキ=が10秒12をマーク。200メートルが本職の飯塚は日本選手権の100メートルには出場しない。桐生、山県、ケンブリッジの「3強」に挑戦状をたたきつけたのが、多田修平(20)=関西学院大3年=だ。

 昨季までのベストが10秒25だった多田は今季、着実に自己記録を更新してきた。4月の織田記念(広島)で桐生に次ぐ2位に入って10秒24。5月の関西学生対校選手権(大阪)で10秒22、今月10日の日本学生個人選手権(神奈川・平塚)で追い風1・9メートルの好条件の中、一気に10秒08まで縮めた。この大会の準決勝で追い風参考ながら9秒94で走ったこともあり、一躍注目の存在となった。

 飛躍のカギはスタートの改善にある。2月の米国合宿で、元世界記録保持者のアサファ・パウエル(ジャマイカ)らと練習。頭を下げて腰を曲げ、つまずき気味に出ていく多田を見て、アサファの兄ドノバン・パウエルコーチは「そのスタートでは後半に失速する」と指摘。胸を少し起こし、腰から背中のラインをまっすぐにする姿勢を教えてもらった。アレンジを加え、足に負担が少なく、かつ鋭い飛び出しを身につけた。

 東大阪市出身で大阪桐蔭高から関学大へ進んだ。昨年の日本選手権は準決勝敗退。今年は慣れ親しんだ長居のトラックで走れる。しかも決勝の24日は21歳の誕生日だ。舞台は整った。「いい感じできてるんで、いまは自信あります」。多田はさわやかに言いきる。

 順当にいけば、優勝に最も近いのは桐生だろう。4年前の京都・洛南高時代に10秒01で走ってから、常に9秒台への期待を背負いながら成長してきた。今季も10秒0台で3度走っており、高いレベルでの安定感は群を抜く。ただ、ここ一番で力を出し切れない傾向にあるのが気がかりだ。桐生は「日本選手権で勝った人が一番強い。しっかり優勝したい」と話している。

 3月に右足首を痛めた山県は、3カ月半ぶりのレースとなる。2カ月間は練習もできなかったが、何とか間に合わせた。「優勝だけを狙って戦う。自分が勝つとしたら先行逃げ切りです。(スタートの)音が鳴った瞬間から先頭を走ってるイメージで練習してます」。勝負強さでは桐生にも勝る。

 昨年の覇者ケンブリッジは日本選手権のポスターに「ピン」で登場。「一人で出ちゃって申し訳ないですけど、ポスターに恥じない走りがしたいですね」。昨年の決勝で先行する山県と桐生を差したように、終盤の切れ味が売りだ。

 世界選手権の出場枠は3で、標準記録突破者が優勝すれば代表に決まり、3位以内なら有力となる。3枠を巡る「4強」の争いについて、10秒00の日本記録を持つ伊東浩司・日本陸連強化委員長はこう言った。「4人が横一列ですね。勝つためには9秒台が必要な状況になりました」

 23日に予選と準決勝があり、24日午後8時38分からの決勝で、最速の男が決まる。(篠原大輔)

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