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 10年前の夏はとにかく暑かった。

 25日まで陸上の日本選手権が開かれていたヤンマースタジアム長居のイベント会場に、ジャージーの上下が飾られていた。右胸に「力の限り! とされい子」とサインがあった。2007年、同じ会場で世界選手権が開催された。灼熱(しゃくねつ)の太陽のもと、日本選手は体調不良の選手が続出した。地元の利を生かせず、メダルは女子マラソンの土佐礼子(三井住友海上)の銅一つに終わった。

 あれから日本の陸上界はどう変わったのか。男子短距離陣の躍進ぶりと層の厚さには驚くばかりだが、その熱狂の裏で、他の種目は苦戦していると言えないだろうか。

 突破すれば1種目につき3人まで出場可能となる世界選手権の参加標準記録は、近年の各種目の記録を基に国際陸連が定める。大阪世界選手権の時(標準記録A)と、今夏にあるロンドン大会の標準記録を比較してみると、トラックとフィールドの男子7、女子10種目で10年前より下がっている。ドーピング違反による有力選手の出場停止が影を落としている種目もある。

 レベルが下がっている種目があるにもかかわらず、26日にあった世界選手権代表の1次発表は、日本陸連の尾県貢専務理事が「ちょっと少ない」と語った男女19選手。特に女子は長距離種目のみの選出で、マラソン、競歩、5000、1万メートル以外で標準記録を突破した選手が現時点でゼロなのだ。伊東浩司強化委員長は女子について「大きな課題。スピードのある100メートルの選手を障害や跳躍種目に生かすなど、種目を変えてもらうことも考えないといけない」と話す。

 記録の停滞も明らかだ。リレーも含むトラックとフィールドの男女それぞれ21種目で、大阪世界選手権以降に日本記録が更新された種目は男子が6で女子が9。一方、大阪世界選手権前の10年間では男子13、女子は全21種目で日本記録が塗り替えられた。

 これからアジア選手権などで標準記録突破を狙う選手もいる。3年後の東京五輪に向けて、様々な種目で日本選手の活躍が見たい。(堀川貴弘)