(新ポリティカにっぽん)自民惨敗、街頭での予兆
早野透=元朝日新聞コラムニスト・桜美林大学名誉教授
7月1日の夕方、安倍晋三首相の顔を見にJR秋葉原駅の電気街出口にでかけてみた。なにしろ、東京都議選がもう9日間も繰り広げられているというのに、安倍さんの街頭演説は1回もなかった。もうあしたは投票日というときに、1回だけやるという。そりゃ、どんな感じかな、と見にいったわけである。むろん、安倍さんの顔は、もう2、30年、見慣れてはいるが…。
しかし、そこで見た人びとの顔、聴衆の顔、その動き、あとになってみれば、あれが2日の投票日の自民党惨敗を予兆させていたんだなと思い当たる。「千代田区」は定数1、自民党は27歳の中村彩さんという女性の候補者を擁し、安倍さんを迎えておおいに盛り上がるべきなのに、そこで飛び交った「安倍やめろ」「帰れ」のシュプレヒコール、わたしも長く政治を取材してきてこんな場面に出会ったことは、覚えがない。
この秋葉原駅前、安倍さんも好きなのだろうか、折々、ここで彼の演説を聞いたことがある。ここのスペースは、演説カーを囲んで聴衆は横に縦に広がり、自動車の通行に妨げられることもなく、一体感をもって聞くことができる。この日も、これは自民党の固定的な支持層というべきか、日の丸の旗が配られ、おおいに盛り上がろうということだろう、聴衆の右半分は、そんな日の丸を持つ人々が占めた。ほお、相変わらずだね、とわたしは後ろに立って見ていた。
安倍さんはまだ来ない。候補…