拡大する写真・図版 デルハミエの非公式集落で暮らす男の子=レバノン、大久保真紀撮影

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 「仕事をください」。懇願してきたのは13歳の少年だった。ある母親は「どこにも行くところがない」と涙を見せた――。シリアの内戦が始まって6年。隣国のヨルダン、レバノン、トルコには、登録されているだけでも500万人近い難民が暮らす。日本ユニセフ協会の視察に同行して3カ国を歩いた。目の当たりにしたのは追い詰められた難民たちの生活だった。

 トルコ南部のガジアンテップ。やせ細った少年、アブドゥル君(13)は悲しみをたたえた瞳を向け、仕事がほしいと言ってきた。難民一家の長男で、幼い妹弟とともに飢えと闘う暮らしだという。

 アブドゥル君の住まいを訪ねた。貧困地区にある半地下の小さな2部屋で家族ら11人で暮らす。母のレジャ・イサさん(32)と5人の弟妹が一緒に迎えてくれた。

 部屋には家財道具はほとんどない。あるのは5枚の毛布だけだ。イサさんは「夜は寒い。お金がない。助けてほしい」と訴えた。

 シリア北部のアレッポで暮らしていた。街は政府軍に包囲され、日に15回も爆撃があった。1年ほど前に自宅が破壊され、イサさんの実家に逃げたが、そこにも爆弾が落ち、目の前でイサさんの父親が死亡した。

 一家はアレッポを車で脱出。爆撃を逃れ、モスクや道ばたで眠りながらトルコ国境にたどり着いた。国境は閉鎖されていたが、夫が爆撃で崩れた壁の下敷きになって大けがをしていたからか、入国を許された。

 イサさんはぜんそくで、子どもたちの多くは心臓に持病がある。夫はトルコに来て入院した。一家の働き手はアブドゥル君と次男(12)だ。

 だが、アブドゥル君は栄養失調のためか、洋服屋で働いているときに意識を失って倒れ、店から最近追い出された。次男も洋服屋で働くが、1日12時間労働で週給は35トルコリラ(約1100円)。その次男もこの日は体調を崩して自宅にいた。

 「食べられても、パンとお茶だけ。肉も野菜も子どもたちにあげられない。いつもおなかをすかせている」とイサさん。親族から金を借り、何とか生きてきたが、借金はすでに2500トルコリラ(約7万8500円)にのぼる。「お金が必要なんです」と涙をこぼした。

 アブドゥル君はシリアの小学校で1年学んだだけで、内戦が始まって通えなくなった。取材中、三男のハサン君(9)が「学校に行きたい」と口を挟んできた。すると、次女(7)も「勉強したい」と言い出した。

 同行していた国連児童基金(ユニセフ)アジア親善大使のアグネス・チャンさん(61)が、日本から持ってきたお菓子をあるだけ手渡した。子どもたちは袋に群がり、むさぼるようにチョコやおせんべいを口に入れた。その姿は痛々しく、正視するのが難しいほどだった。

 帰り際、涙を流すイサさんの肩を抱くと、「あなたのために祈る」と声をかけられた。「私もあなたとあなたの家族のために祈る」と答えることしかできなかった。

 部屋を出ようとすると、ハサン…

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