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特派員リポート 金成隆一(ニューヨーク支局員)

 米国の白人民族主義団体が、貧困におびえる「白人労働者」を狙って勧誘を活発化させている。石炭業が衰退したアパラチア地方や製鉄業が廃れたラストベルト(さびついた工業地帯)など、昨年の大統領選でトランプ氏を熱心に支持した地域が舞台だ。彼らがアパラチアの山奥で集会を開くという。白人至上主義のKKK(クー・クラックス・クラン)も来るらしい。取材に向かった。

◇緊迫の街

 山あいの町、ケンタッキー州パイクビルは物々しい雰囲気に包まれていた。サングラスをかけた黒ずくめの服装の約140人が街を歩く=写真①。腰に銃やナイフを携行し、肩にライフル銃を担ぐ姿も。確かにKKK=写真②=や、独ナチスと同じ「国家社会主義」のロゴの入った上着姿の参加者もいる。

 人口7千人の町では、店の多くが臨時休業となり、武装警察官が隊列を組んだ=写真③。ほぼ同規模の抗議者も集まり「差別主義者は出ていけ」と叫ぶ。

 このエリアが集会場所に選ばれた理由は明快だ。集会の案内に記されている。「住人の98%超が欧州系の白人」「子どもの3人に1人、高齢者の5人に1人が貧困層」「トランプが8割超を得票した」

 トランプ氏はケンタッキー州全体では62%を得票した。特に山の深い東部で強さを見せ、得票率は7~8割台に及んだ。

 この一帯が白人民族主義団体の勧誘のターゲットだ。現状に不満を抱える白人労働者が狙われている。

◇「見捨てられた白人」

 集会を催した団体の幹部マット・パロットさん(34)が言う。

 「米国で白人は優遇されてきたと言われるが、この一帯を車で走れば、ここの住人は違うとわかる。彼らの声は代弁されていない。エリートに見捨てられた白人だ」

 「白人やユダヤ人のエリートに虐げられているのは、(黒人やヒスパニックら)人種的な少数派と思い込む人が多いが、この産炭地では白人も被害を受けている。まるでアフリカの第三世界だ。石炭という資源を大企業に奪われ、利益を州外に持ち出され、白人労働者は捨てられた。帝国主義時代の植民地だ」

 パロットさんは、インディアナ州南部の小さな町パオリからやってきた。10歳代の前半に人種問題に関心を持ち始め、まもなく「白人にも差別されている人々がいる」と気づいたと主張する。20歳代の前半に白人民族主義団体に加わり、活動歴は10年になるという。

 腰に拳銃を身に着け、集会で満面の笑みを浮かべている男性がいた。サウスカロライナ州から参加した自動車修理工のジョンさん=写真④=(68)は「白人同胞を守るために車でやって来た。このままでは白人の立場が弱くなるばかりだ。存在を示す必要がある。次の集会にも必ず参加する」と話した。

 一方、地元パイクビルの住人は迷惑顔だ。

 路上を封鎖していた警察官は「連中はこの街の住人ではない、外からこの街を選んでやって来た。一刻も早く集会を終えて、出て行って欲しい」。町が事前に警戒を呼び掛けたため、町外に避難した住人も少なくないという。

 ひときわ大きな声で白人民族主義に抗議していた男性がいた。18年間働いた木材会社を解雇され、失業中のブレット・デボードさん(48)=写真⑤=は「失業、薬物汚染、精神疾患。やつらは貧困にあえぐ我々につけ込もうとしている」「KKKは1990年代にもこの町で集会を開いた。私はあの時もここに立って抗議した。当時から何も変わっていない。ここはずっと貧困地域なんだ」

◇山奥の私…

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