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 フォーラム面では、2015年春のシリーズ「『PTA』どう考えますか?」を皮切りに、PTAのあり方についてみなさんと考えてきました。十分な説明がないまま会員になっていたり、活動を強制されたりといった問題は、今も解決されたわけではありません。新たに目立ち始めた課題もあります。それでも、課題を共有し、解決を模索する動きは、各地で始まっています。

 2年前に実施した朝日新聞デジタルのアンケートにも、新たな課題が姿を見せていました。意見の抜粋です。回答者の属性は当時のものです。

●「加入申込書に『全保護者が対象です』と書いてあり、最初から高圧的な印象でした。係決めのくじ引きで白羽の矢が立った方は引き受けざるを得ないのは、日本の風習?でしょうか。外国人保護者には理解してもらえているのでしょうか。活動の良い面より運営方法や組織の在り方など悪い面が目立ち残念です。学校との癒着も好ましくないです。PTA活動は先生にも負担ではないでしょうか。PTA活動の負担が子を持つ意欲に影響して少子化の一因にならないといいですね。現状ではこの負担を避ける一番簡単な方法が子の人数を増やさないことなので」(神奈川県・40代女性)

●「役員を決めるときの雰囲気の悪さは何とも言い難い。日本語があまり理解できていない外国人の母親たちに押しつける様を見て、黙っていられなくなった」(東京都・40代男性)

●「昨年、電話スカウトで初めてPTA本部役員になって2年目。4月の役員選出(くじ引き大会)を終えたところ。最近外国人の保護者もちらほらいらっしゃって、今年は欠席くじ引きで外国人保護者がクラス委員になり、さらにその次の段階の欠席くじ引きで専門委員会で委員長に大当たり。日本語会話はできる方らしいけれど、文章能力、指揮統制はキツそうで。でも他の皆さん代わりを引き受けるわけでもなく。今後の多国籍な社会でPTA活動はどうなっていくのでしょう」(京都府・40代女性)

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 日本の学校を卒業した人でも、親として戸惑うことの多いPTA。増加する外国人保護者にとって、暗黙の了解で「そういうことになっている」部分は、高いハードルです。

 関東地方のフィリピン人の母親にある日、子どもの学級担任から電話がありました。「あなたは最初の保護者会を欠席しました。PTAはベルマーク委員です」

 PTA?ベルマーク? フィリピンのPTAはやりたい人がする活動でした。「PTAに入るのはやめたいです」と言うと、「それはちょっと無理なんです」と担任は困ったように言いました。日本語の読み書きは苦手で学級だよりは読まず、PTAの説明もありませんでした。仕事で保護者会にも行けないのに、PTA活動をしなければならないと聞いて、頭を抱えました。

 東京都の中国人の母親も、最初の保護者会後のPTA役員決めに戸惑いました。突然のジャンケン大会で負け続け、みんなから敬遠されていた係に。自分が通った中国の学校にPTAはなく「仕事もあるのに、意味も分からず苦痛。日本のお母さんたちはなぜ文句を言わないの?」

 「外国人保護者も、必要な情報や友達を探している。PTAはきっかけの一つになり得ます」と言うのは、NPO法人青少年自立援助センターで定住外国人支援事業部の責任者の田中宝紀(いき)さん。外国人保護者との意見交換会を開いたり、平易な説明文を用意したりするPTAも出てきました。「配慮や運営の見直しは、様々なニーズを抱える日本人家庭にも役立ちます。子どもたちの時代は『多様な価値観を持つ人たちが共に生きていく』のが当たり前になる。親も、異なる価値観を排除しない共生を学びませんか」(堀内京子

名簿などの課題を共有

 「東京都小学校PTA協議会」(都小P)が6月24日、都内の小学校で情報交換会「みんなで語ろう PTA活動!」を開きました。会場になったランチルームは、事務局の予想を超える約100人の参加者で満員でした。都小Pに加盟していない区市町村の小学校にもチラシを配り、参加を呼びかけたそうです。

 冒頭で報告された実態調査では、「加入が任意であること」を説明しているPTAが約62%、説明をしていないPTAが約34%でした=グラフ。森本武志副会長は「今後は100%にしなければならない」と強調。改正された個人情報保護法に対応するためにも、「入会申込書」が必要だとして、都小Pが作ったひな型を示しました。「『入りたくない人は申し出てください』とするのは、だめですか」という質問に、森本さんは「入会の意思を表明してもらうことが原則です」。

 続いて、5、6人のグループに分かれ、名簿などについて情報交換しました。参加者は主に各小学校のPTA役員たちです。「芸能人など個人情報を知られたくない人もいる」と、既に学校との名簿のやりとりは一切していないという学校もありました。一方、「会員の個人情報は問題にされるけど、我々役員の情報は守られていないよね」という意見も。学校の名簿とは別に、任意加入した家庭の名簿を作ると、非加入の人が分かってしまわないかという懸念も出されました。

 活動について「(役職や活動に配点する)ポイント制を導入することを検討中」という役員に対して、「役職についてポイントだけもらって仕事をしない『ポイント泥棒』もいる」と助言がありました。「日本語を話せない外国の人に、どう説明すればいいか」「PTAの必要性や役職の魅力を伝えることが必要。否定的意見を覆すマジックワードがほしい」といった切実な声も聞かれました。(杉原里美)

冊子で色々な考え方提案

 入会申込書、非会員への対応、学校からの名簿提供――。浮かび上がる課題に、千葉市PTA連絡協議会(市P連)は冊子「本当に聞きたかったPTAの悩みごと」を2年がかりで作り、この春、市内の小中学校に配布しています。「耳が痛いことでも、きちんと議論して現場をサポートする必要がある」と考えたそうです。

 保護者同士がPTAについて話し合う物語調です。たとえば、会費の金額の決め方。「原則としては、年間の活動予定から必要な金額を算出し、会員数で割って金額を決めることになる」「使い切れずに繰り越しが多くなりすぎたり、逆に足りなくて必要な活動ができなかったりすると困る」などと話し合っています。

 役員をすでに経験した保護者の多いクラスで、役員がなかなか決まらないというありがちな問題に言及。「クラスの役員にこだわる必要はあるのか」「学校の規模によっては、学年全体で話をするのが難しい場合もある」などの意見が並びます。

 増えつつある「非会員」の子どもの扱いが課題になっていることをふまえ、記念品の贈呈についても議論しています。「会員から集めた会計から記念品を贈呈している以上、会員でない人の分の記念品までPTAの会計から出すのは不公平にならない?」「PTAの活動は『会員の子どものため』ではなく、『その学校の児童・生徒のため』に行うものであるってことじゃないかな」などの意見が紹介されます。

 「正解を示すのではなく、色々なやり方や考え方を提案すること」を心がけたと神尾祝子・市P連事務局次長は言います。「参考にすぎませんが、冊子をヒントに、各PTAで解決策を考えて欲しい」(田中聡子)

不満の表明が組織に風穴

 「PTAという国家装置」(青弓社)の著者の岩竹美加子さんに話を聞きました。

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 日本のPTAは戦後、連合国軍総司令部(GHQ)が発足させたとされていますが、学校に財政援助をした父兄会や、学校と隣組を奉仕活動で支えた戦前の「母の会」の性格を引き継いでいます。

 子どもから学ぶことはたくさんありますが、日本では国が子どもや家庭の教育に注文をつけ、「地域との連携」などと巧妙に介入してくる。母親たちも「奉仕と修養」という価値観を、「思いやり」とか「和」という言葉で刷り込まれる。

 私もかつて日本のPTAを経験しました。「当然拒否権があるので、役員決めのくじ引きはしません」と言ったら「他のお母さんには言わないで。動揺させるから。くじは引かなくていいから」と言われました。

 同調圧力の強さは分かりますが、不満があったら意見を言ってもいい。抵抗してもいい。「やりたくない」「イヤだ」と言っていい。それが、組織のための組織に穴をあけていくことになるでしょう。

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 PTAが抱える様々な問題は、解決に向けて1ミリも前に進んでいないのではないか――。毎年みなさんから寄せられる同じような不満に触れて、そんな思いにとらわれていました。今回、都小Pの情報交換会に参加して、新たに入退会の同意を取るようにしたというPTAもあるなど、変化も表れていることがわかりました。保護者の意見は一様ではありませんが、ほかの地域のPTAのことを知り、悩みを共有し、知恵を寄せ合うことで、保護者の多様な価値観を許容できる土壌が生まれるのかもしれません。

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