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 「子どもの貧困解決に、何かかかわることはできないだろうか」と思ったことはありますか? 朝日新聞社が今月、大阪市内で開いたフォーラム「子どもと貧困~踏みだそう、解決への一歩」では、具体的に一歩を踏み出した「先輩」たちと語り合ったり活動を疑似体験したりしました。共通するのは、つながりをつくり、孤立を防ごうという意識でした。

相手に変化を求めない 居場所作り

 門馬優さんの講座には、約60人が参加しました。TEDICの活動は多様です。学習支援のほか、小学校や町内会などと協力して、子ども食堂を立ち上げました。児童相談所や病院、他の支援団体などとも連携し、一人一人に合わせた支援をしています。

 象徴的な取り組みは、生活困窮世帯の子どもたちが学生ボランティアらと夕食を食べたり宿題をしたりして過ごす「トワイライトスペース」。会話をしながらの夕食を経験したことがない子、甘い飲み物ばかり飲んでいるのでお茶や水が飲めない子、本当に何も食べていない子……。そんな子たちを見て門馬さんは「一つのテーブルをみんなで囲んで食べるってすごく大切な営み」と感じています。利用者の3人に1人は不登校だそうです。

 門馬さんの原点は、東日本大震災後の、ある不登校の中学生男子との出会いです。リストラされアルコールに逃げていた父親は母親に暴力をふるい、家庭は荒れていました。その中学生は震災があって外に放り出され、ボランティアとの出会いを経て、門馬さんのところに来ました。「震災があったからやっと人とつながることができた」と話していたそうです。

 震災で可視化されただけで、今もつながることができていない子がいるはず。「どこで、どんな環境のもとに生まれても、『当たり前』に生きていけるようにしたい」。それが門馬さんの願いです。(後藤泰良)

 ――どうして、そんなネットワークが作れたのですか

 埼玉県の町議会議員の女性(59)

 門馬さん 活動を続けている中で、必要なときに必要なところとつながっていくうちに、色々な会議などに参加できるようになっていきました。一対一の関係の積み重ねです。

 ――支援する相手とかかわる上で、大切にしていることはありますか

 大阪市西成区で保育士をしている女性(32)

 門馬さん 私たち支援する側が、相手に変化を求めたり期待を持ったりしてしまうと、お互いにつらくなっていく。そうではなく、私たちが変化していくことで何かが変わるんじゃないかと考えると、とたんにできることが増えます。この視点の切り替えはすごく大事。僕たち支援する側が偉くて相手がダメということではない。相手のことをリスペクトできるかがすごく大事だと思っています。

学校とのつながり大切 子ども食堂

 高校生や学生、看護師、管理栄養士、教員ら様々な立場の10~70代の55人が参加しました。子ども食堂に関わっている人も多く、川辺康子さんの取り組みを聞き、食堂の場所の確保の苦労、行政とのつながりかた、学生ボランティアとの連携の模索といった悩みを語り合いました。

 子どもと幅広い世代の大人が出会う場である食堂。そこにかかわる人たちのつながりの芽を感じました。

 「今日のメニュー 中華丼 たまごスープ 大学いも バナナとおやつ」。川辺さんが開いている「にしなり☆こども食堂」の看板は子どもたちの手書きです。「しんどくても、子どもは自分からは言わない。たった一人でも目の前に子どもが来てくれたら、その子はその場を必要としています」。川辺さんは、関西各地の子ども食堂のネットワークを昨年スタートさせました。どう続けたらいいか困っていても、声を上げられない食堂が多いやろな。そう思ったからです。「食堂は民の力。がんばっているけれど、後押しする制度が必要。施策を作ってほしい」と考えています。(河合真美江)

 ――子ども食堂に誘いたい子にどう声をかけたら

 7月に子ども食堂でボランティアを始めた大阪府の高校2年女子(16)

 川辺さん 3年前、夜ひとりぼっちで過ごす男の子に「食堂を開くからおいで」って言ったら、「なんでおまえのところに行かなあかんねん。おれとおまえの関係は何やねん」て。食べさせてあげるという意識を持ったのが失敗でした。子どもたちに来てもらうには子どもとの関係作りが必要。そのためには学校とも連携が大切です。先生に「子ども食堂に行ってみたら」と声かけをしてもらっています。

 ※学校とつながり、子どもや先生に自分を知ってもらうために、川辺さんは地元の小学校に絵本の読み聞かせに行っています。

 ――補助金をもらって資金にしたいけれど、月2回開催など条件があり、悩んでいます

 昨年11月にスタートし、大阪府大東市で月1回開く子ども食堂の女性(65)

 川辺さん 最初は私のお財布から出しましたが、続きません。地域の教育財団の助成金40万円をもらった時は「茶わんとか形の残る物にお金を使ったらあかん」と制約がありました。独立行政法人福祉医療機構(WAM)の助成を2年もらいましたが、食材費にも使えて助かりました。個人で寄付して下さるかた、ふるさと納税の返礼品を送って下さるかた、畑を広げて食堂のために野菜を作って下さるかたもいて、ありがたいです。

 ――「貧乏と思われるから行くな」という人がいる。ハードルをどう取り払うか

 4月に京都府内で始めた子ども食堂の調理スタッフの農業男性(71)

 川辺さん そう言うのはだれか。大人なんですよ。子ども食堂は子どもと地域、子どもと大人がつながる場なんですよ。貧乏だからとかそういうもんじゃない。そういう社会の意識を変えたいですね。

食べ物にはドア開く力 フードバンク

 賞味期限が迫った防災備蓄品、へこみのある缶詰、お歳暮の残り物の乾麺……。NPO職員や大学院生ら約30人が参加し、鈴木和樹さんの助言を受けながら、段ボール6箱分の食材の仕分けを疑似体験しました。

 送り先として想定したのは「11歳の娘と暮らす40代シングルマザー」「電気・ガスが使えない70代男性」「硬いものは食べられない80代夫婦」の3世帯。参加者はそれぞれの世帯の1週間分の食材を箱詰めしました。賞味期限切れや、開封された商品は取り除きます。アルコール依存症の人に渡る可能性もあるため、みりんは入れません。飲酒欲求を引き起こす可能性があるので、ノンアルコールビールも入れません。

 「子どものいる世帯はお菓子を一番目立つ場所に置きます」「電気・ガスが使えなくても食べられるメニューを想像して」。鈴木さんの言葉に、参加者たちはうなずいていました。(机美鈴)

 ――乾麺ばかりでつゆが足りない。毎日同じような献立になってしまった。せっかく送るなら喜んでもらいたいが、限られた食材ではなかなか難しい。一般社団法人理事の女性(44)

 ――フードバンクって言葉はよく聞くけど、中身はよく知らなかった。膨大な食品を仕分けるには、人手も場所ももちろん必要だが、お年寄りにお餅はダメとか、子どものいる世帯にはお菓子をあげようとか、想像力も必要と気づいた。NPO職員の女性(49)

 鈴木さんの話 食べ物には不思議な力があります。何も持たずにピンポンを押してもドアは開きませんが、「賞味期限が切れそうなジュースがあるからもらって」と言えば開きます。でも、食べ物を渡して「ハイ終わり」ではダメ。困窮者は空腹だけが悩みではなく、多重債務やうつ、職がないなど複合的な困難を抱えています。一つひとつを自力で解決するには時間も労力も必要です。

 フードバンクをきっかけに、複合的な困難の解決につながってほしい。そのためにも、いろんな組織・団体と協働でやることが大切だと思っています。

     ◇

 〈フードバンク〉 企業や個人から寄贈された食品を、支援を必要とする人や福祉施設などに無償で提供する。包装の破損した加工食品など、中身は問題ないのに廃棄される食べ物の有効活用策でもある。農林水産省の2016年度の調査では、全国で77団体が活動している。

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 子どもの貧困対策法が成立してから4年。自治体では実態調査や対策の予算措置がされ、地域や学校では個別の支援が広がっています。今回の実践者の話から見えてきたのは、「してあげる」気持ちや「やりたい支援」ではなく、目の前の子どものニーズを聞き、寄り添い、動くこと。そして、ネットワークの重要性でした。それらは子どもの心の支えにもなっています。

 今回のフォーラムでは、全国から約130人が集まって知恵を共有しました。終了後の交流会で、参加者が名刺交換したり課題を話し合ったりしてつながっていく様子を見て、これから子どもの貧困を知ろうとする人も一歩を踏み出せる機会を、引き続き作りたいと思いました。(中塚久美子)

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